レアアースをめぐっての 大人と子供のけんか

レアアースを武器にした中国

 レアアースは他の金属と混ぜ合わせることで、その属性を大幅にアップさせる効果がある。このため電池等の先端技術に不可欠な存在だ。しかし、現在は中国が世界生産量の95%以上を占めている。日本の電池技術、省エネ技術は世界一だなどと自慢しているが、中国と言うお釈迦様の手の中にいるのも同然なのだ。
 中国商務省は7月末、レアアースの輸出割当量を3万0258トンと発表したが、これは09年の水準を40%下回っている。

環境保全とうそぶく中国

 中国の陳徳銘商務相は「レアアースの大量採掘は環境に多大なダメージをもたらす。だからこそ中国はレアアースの生産、探査、貿易に対する規制を強化した」と述べている。確かにレアアースの無秩序な採掘が環境に大きな負荷を与えているという事実はある。しかし、中国の狙いはそんなところにはない。レアアースを武器に、日本や欧米の先端技術を盗み取ろうとしている。

日中ハイレベル軽罪対話に出席するローレベル政治家たち

 そんな中で、8月28日北京で「第3回日中ハイレベル経済対話」が開催された。日本からは岡田外相ほか120人の代表団を送り込んだ。「貿易・投資の環境整備」「知的財産権の保護」が主要テーマだが、日本は、レアアースについての輸出規制の緩和を訴えようと意気込んでいた。しかし、27日中国はジャブを繰り出す。李克強副首相(胡錦涛の一の子分)は「日本企業は環境や省エネ分野でビジネスチャンスをつかんでほしい」と訴えた。要はレアアースが欲しければ、中国国内で合弁企業を作って、そこでレアアースを使った先端分野製品を製造したらいいではないか、ということだ。
 要するに、中国の政治家に比べれば、日本の政治家など、大人と子どもだということだ。中国は、零細企業からレアアース採掘権を取りあげ、国営企業等の共産党系企業にレアアース生産を独占させた。表向きの理由は「零細企業が乱開発をして環境被害を与えている」ということだが、実際には共産党系企業でおいしいところを独り占めにし、レアアースを政府のコントロール下に置くことだ。中国のやることは全て戦略に基づいている。日本がやるべきことは、中国の弱みを握ることだ。まず他の欧米先進国に中国の野望を伝え、これを阻止するための足並みをそろえることだろう。欧州はWTOへの提訴を考えているようだが、時間的余裕があるだろうか。もっと泥臭い、直接的な方法を考えるべきだろう。中国に対して、10歩身を引けば、100歩詰め寄ってくる。中国を10歩押せば、1歩引きさがる。中国とはそうした国だ。欧米束にならないと中国相手に勝ち目は無い。

備蓄があるうちが花

 しかし、こういう目にあうのも、経産省の役人の戦略眼の無さが原因だ。日本も希少資源の戦略備蓄をしているのだが、レアアースは備蓄の対象外なのだ。日本が交渉力をもっているのは、備蓄が続いているうち、これを吐き出せば、あとは中国にしゃぶりつくされるだけだろう

追記

 中国国務院が『企業合併・再編促進に関する意見』を公布。レアアースを合併・再編促進産業のリストに加えた。政府関係者によると、レアアース業の合併・再編により、15年までに現在の約90社から約20社に統合する計画であるという。(10.9.18)

日経10月4日に同趣旨の記事が

 18年前訒小平は「南巡講話」で「中東に石油あり、中国にレアアース有り」と言ったそうです。日経は「尖閣諸島をめぐる国家間摩擦の陰に隠れて見えにくいが、中国が対日圧力をかける狙いの一つは、日本企業からの技術の吸い上げだろう」と言っていますが、こういうことは去年くらいに言ってほしい。
 大手電機メーカーの首脳が、日経の記者に、中国高官が日中合弁企業のの下に研究開発センターを設け、日本から技術者を派遣しろとの要求をつきつけ、一歩も引かないと言う。
 日本としては米国と協調したいところだが、米国企業と中国政府は既に手を結んでいて、日本が割当を減らされオタオタしている横で、十分な供給を受けていると言う。
 要するに、日本は政府も企業も、先を見る目がないということでしょうね。(10.10.9)