円高への妙案は

為替介入の是非

 15年ぶりという円高水準の中、為替介入すべきなのか、すべきでないのか。肯定論もあり否定論もありという状況だ。否定論はやってもうまく行かず、財政を悪化させるだけだという。その場合問題になるのは、他国の貨幣政策と、ヘッジファンドの実力だ。

通貨安を競う各国政府

 現在、先進国各国は、国内の内需が落ち込んでおり、輸出を増やすしかないと思い定めている。オバマは輸出倍増計画を立て、国内消費が伸びない分輸出で補おうとしている。そのため、中国政府に人民元の切上げを迫っている。人民元の切り上げはイコールドルの切下げ。しかし米国はそれでも構わないというスタンスだ。
 欧州輸出産業が好調だが、これもユーロ安の影響だ。ユーロ圏16カ国の10年4−6月期の実質GDPの伸び率は前期比で1%、年間で4%に相当する。特に輸出産業国が好調で、ドイツは2.2%の伸びを示している。オーストリア、オランダ、スロバキアは1%の伸びを記録した。こうなるとEUもユーロ安相場を容認する方向に向かっていくだろう。世界が自国通貨安を試行する中では、日本円のみが独歩高ということになっても、他国はウェルカムということになる。そうなれば日本が為替介入をすれば、他国からの非難が集中しかねない。

ヘッジファンド

 03年〜04年、日本は深刻なデフレ下にあった中で、政府・日銀は積極的に円売りドル買い介入を行った。このとき35兆円を投じたが、介入は成功。米国ファンドマネージャーの何人かが自殺に追い込まれたという話もある。しかし現在のヘッジファンドの規模はかつてとは比べ物にならないほど巨大化している。そうなると35兆円程度では海外ヘッジファインドとタイマンをはれないのではという危惧がある。スイス中銀はギリシヤ危機以降スイスフラン高を阻止するために為替介入を行ったがユーロ安を止められず、1.1兆円の損失を負ったという。
 ただ、現在銀行からヘッジファンドへの融資が絞られてきているという。そうなるとヘッジファンドといえどもそんな実弾は持っていないのかもしれない。ひょっとすると円高為替介入をすれば、ヘッジファンドも対抗してこない可能性もある。