新明和工業、二式大艇のDNAを継ぐUS−2を海外に売り込み

新明和工業、US−2の民間転用機を海外に売り込み

 新明和工業自衛隊に納品してきた飛行艇US−2を、民間向けに改造、海外に売り込みを図っている。

ルーツは二式大艇

 この「US−2」の原型機は、第2次大戦中、川西航空機が開発し、日本海軍が正式採用していた二式大艇二式大型飛行艇)である。二式大艇は、フグのような見かけによらず時速465キロ、航続距離6600km。現在のUS−2が580km/h、4700km、B−29が576km/h、6600kmだったのに比べれば、その高性能ぶりが明らかだろう。さらにユニークなのは機底部の波消し装置で、波のある海面での離着水も可能にしている。終戦後、米軍は日本の航空機のうち優秀な3機を研究用に米国本土に持ち帰ったが、そのうちの1機がこの二式大艇だった(残りは百式司偵と、もう一機が失念)。アメリカに引き取られて性能確認試験が実施され、圧倒的な高性能を発揮してアメリカ側を驚かせたという。この機体は長らくノーフォーク海軍基地で保管されていたが、その後スクラップにされそうになったところを引き取られ、最初は船の科学館で、04年からは海上自衛隊鹿屋航空基地資料館に野外展示されている。

US−2の性能

 US−2(4発プロペラ)のライバルと目されているのが、カナダボンバルディア社のCL−215(双発プロペラ)、ロシアベリエム社のBeー200(4発ジェット)。性能の上ではこの2機はUS−2に遠く及ばない。
 最大離陸重量はUS−2は47.7トンなのに比べて、他の2機は19.9t、41t(前者はボンボルディア機、後者はべリエム機)。航続距離はUS−2が4500km、他は2426km、3300km。離水距離はUS−2が280m、他は665m、1000m。着水距離はUS−2が330m、他は665m、1300m。着水可能波高はUS−2が3m、他は1.8m、1.2m。
 ただ問題は値段だろう。

追加 US2インド、ブルネイ輸出へ

 US2の設計などの技術情報は防衛省に帰属しており、開示には防衛相の承認が必要。輸出を念頭に新明和は情報開示を求め、防衛省も民間機使用と変わらないということで、これを承認する見通しだという。海外との商談では当初欧米を想定していたが、ここに来てインドとブルネイが強い関心を寄せているという。海洋進出を強める中国をけん制する政治的意図も透けて見える。(11.7.2日経朝刊。11.7.10追記)