欧州銀行ストレステスト結果発表

不合格は7行、資本不足額はわずか35億ユーロ

 欧州銀行監督者委員会(CEBS)による欧銀のストレステストの結果が、7月23日発表された。
 審査対象となった91行中7行が不合格。不合格となったのは、スペインの中小銀行5行、ドイツのヒポ・レアル・エステート、ギリシャ農業銀行で、不合格行の資本不足は全体で35億ユーロ(45億ドル)となった。

出来レースとの批判

 不合格となった7行のうち、ヒポは既に国有化され、ギリシャ農業銀行も同国大手のピレウス銀行が買収する予定であり、スペインの貯蓄銀行(カハ)についてはスペイン政府が既に100億ユーロの公的資金を注入しており、45行の貯蓄銀行を12行に統合される見込みだ。
 だから、この7行が不合格となっても市場の動揺は無い。要するに、既に対応策が決まっている銀行だけ不合格となったわけで、最初から結果が見えていたような検査結果だ。

国債、不動産評価が大甘

 CEBSによると、今回のストレステストは、「2010年と2011年にかけて欧州経済が3%縮小、両年に株価が20%下落し、銀行が保有する証券化商品の格付けが4ノッチ引き下げられた場合」を想定し、コアTier=中核的自己資本比率普通株と利益剰余金のみ)が6%を下回った銀行を不合格にしたとのこと。同委員会いわく、米国で2009年に実施された同テストが、7年に1度の危機を想定したものだったのに比し、自分たちのテストは20年に1度の危機を想定したもので、米のそれに比べてより厳格なものだったと自画自賛している。
 しかし、市場の評価はこれと異なる。事前の予想から余りにかけ離れた結果だからだ。野村ホールディングスは、不合格が最大16行、資本不足は750億ユーロ(約8兆4600億円)と試算し、英国フィナンシャルタイムズは、最大で20行もの銀行が資本不足と評価され、最高で300億ユーロの資本増強が必要と述べていた。しかし、実際の不足額は予想の10分の1。大甘査定ではないかとの声が強い。
 ドイツでは経営悪化がささやかれている州立銀行も全て合格し、ドイツの14行は最悪シナリオでもコアTierの平均が8.5%となった。
 特に大甘と指摘されたのが、国債と不動産の部分。国債のうち、売買目的で保有されている国債のみがリスク資産とみなされ、満期保有目的の国債は全額償還されるものとの前提で査定が行われている。債務カット(ヘアカット)やデフォルトの可能性が指摘されているギリシャ国債も安全資産とされたことに市場の批判は大きい。また、地価下落の影響が十分に反映されていないとの指摘もある。

ユーロは対ドルで上昇

 ただ、ユーロドルは貯金で1.29ドルまで上がってきている。市場は、騙されるふりをしている、ということだ。米ストレステストも、審査が甘すぎると批判を受けていたが、結局市場の不安は弱まり、その後市場は安定した。市場全体がそのような予定調和を望んでいるのではないか。
 確かに今回の欧銀ストレステストは出来レースだったろう。しかし出来レースにしても、どこの水準に結果を置くかについて、CEBSは相当に悩みぬいたはずだ。結果が余りにも良すぎれば信頼性を失うし、余りに悪ければ市場の不安は増大する。今回の結果は、嘘は嘘にしても、ちょうどいい塩梅だったのではないか。

早くも馬脚を現わす

 米ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)電子版によると、欧州主要銀行のストレステストで、一部銀行はソブリン債保有高を実態よりも少なく申告していたと、伝えている。一部の銀行はある種のソブリン債保有を申告せず、保有高から売り持ち分を差し引いた銀行も多かったという。
 国際決済銀行(BIS)のデータからも欧銀ストレステストのウソが読み取れる。同データによると、フランスの銀行は3月31日時点で、およそ200億ユーロのギリシャ債、350億ユーロのスペイン債を保有していた。それに対してストレステストでは、フランスの銀行資産の80%近くを占めるフランスの主要4行のギリシャ保有高は116億ユーロ、スペイン債保有高は66億ユーロと申告されていた。(10.9.8追加)