欧州危機から米国不安へ

S&P500の下落

6月29日、米株式相場は大幅続落。S&P指数を構成する500銘柄は、1銘柄を除いてすべてが下落した。同指数は09年10月30日以来の安値で終了した。素材、工業、金融等の景気敏感銘柄の下げが大きく、今後の景気動向への不安の表れと言ってよい。よく耳にするダウ平均の構成銘柄は米国を代表する50企業であるが、S&Pを構成する500銘柄は全米企業の株価総額の75%ほどを占めているため、米企業の株価動向をより精緻に表現している。

原因は何か

 30日付ロイターは米株価下落の原因として次の3点を挙げている。

  1. 欧州の銀行が1日に4420億ユーロの緊急融資の返済を控え、金融システムの流動性低下が懸念されること。
  2. 米大手民間調査機関のコンファレンス・ボード(CB)が29日、4月の中国の景気先行指数を当初発表の前月比1.7%の上昇から同0.3%の上昇に下方修正したこと。
  3. 29日発表の6月の米消費者信頼感指数が前月から大幅低下したこと。同指数は3カ月連続で上昇している。

 さらに、今日のテレ東のモーニングサテライトは、「米国の雇用と住宅」を最大の要因に挙げていた。

米企業の大幅増益の本当の理由

 最近まで米国の大企業の業績発表は何れも増収増益で、米国景気は着実に回復しているとの見方が多かった。しかし問題は米企業の増収増益が、雇用の拡大につながっていないということだ。米企業の増収増益とともに、大きく上昇したのが中国の対米輸出の増加だ。要するに米大企業は、中国での生産比重を高めることで経費を軽減し、収益を上げたのである。そのため雇用が伸びず、失業率が高止まりしている。

雇用もダウン、消費もダウン

 雇用が伸びなければ当然消費も低迷する。米大手民間調査機関のコンファレンス・ボードが6月29日発表した6月の消費者信頼感指数は52.9。下方修正された5月の62.7から大幅に低下した。低下は4カ月ぶりで、エコノミスト予想の中央値62.8を大幅に下回った。
S&Pが同じ29日発表したS&P/ケース・シラー住宅価格指数によると、4月の主要20都市圏の住宅価格動向を示す指数は季節調整済で前月比0.4%上昇した。価格の上昇は4月末に期限切れとなった税控除措置の駆け込み需要によるものだが、それでいて、この程度の上昇では、持続的な回復はまだまだ先のこととなる。S&P担当者は「在庫を示す統計、および差押えをめぐる状況は改善の兆しを全くみせていない」「住宅市場が一貫性を持って持続的に経済成長を支えるようになるには、来年まで待つ必要がある可能性がある」という見解だ。
米商務省発表の5月の新築戸建て住宅販売戸数は、前月比32.7%減の年換算で30万戸。販売戸数、減少率とも、1963年の統計開始以来、過去最低。また米商務省は3月分を38.9万戸に、4月分を44.6万戸に下方修正している。あるエコノミストは「過去2カ月分が下方修正された。住宅税控除の効果はわれわれが認識していたほど大きくなかったようだ。少々不安を感じ始めている」と話している。

住宅価格の下落が意味するもの

住宅価格の下落は、銀行の担保の不足を生む。FRBは住宅ローンを証券化したMBSを大量に抱えている。FRBの総資産の半分が米国債、半分がMBSだ。住宅価格の下落はFRBの資産悪化を示している。

オバマの空元気

ところで、オバマは6月29日、「国内経済は力強さを増しており、雇用促進に向けてさらなる成長強化に取り組む必要があるとの見解でバーナンキ連邦準備理事会(FRB)議長と一致した。」と述べた。本当のことはなかなか言えないものだ。

6月はISMも低下

 米供給管理協会(ISM)が7月1日発表した6月の製造業景況指数は56.2と、前月の59.7から低下した。予想中央値59を下回った。(10.7.1追加)