G20金融サミットで聞こえてきそうな菅直人の高笑い

欧州は緊縮財政指向

 G20首脳会議が6月27日閉幕した。
 現在不安視されているのが、ギリシャ問題を発端に欧州各国が進めている財政再建策だ。リーマンショック後急速に進んだ経済危機に対し、各国が協調して積極財政をとることになり、ユーロ圏加盟国も予算のばらまきで財政の赤字化が進んでしまった。そこえギリシャ危機が起こり、さらに南欧諸国全体のソブリンリスクが危惧されるにいたっている。元々、ユーロ加盟国は財政赤字をGDPの3%以内に抑えることが義務付けられていることもあり、各国とも緊縮財政をとらざるをえなくなっている。さらには、ドイツの存在がある。欧州のギリシャ支援、欧州全体の経済安定化プログラムの最大出資者ドイツが、ことさら財政赤字に口うるさいため、ドイツをなだめるためにも緊縮財政をうたわざるを得ないという事情もある。

米国は積極財政指向

 これに異議を申し立てたのが米国だ。せっかく世界の景気が立ち直りかけたのに、欧州が緊縮財政を取り、実体経済が減速することになりかねないと心配したのである。米国も財政赤字を垂れ流しているが、米ドルが基軸通貨のため、通貨下落の不安がない(そう言い切ってしまっていいか、疑問も無くもないが)。

結局は足して2で割った玉虫色

 結局、欧州、米国で話がつかなかったのだろう。声明では、「世界経済の回復は一様でなくぜい弱。多くの国で失業水準は容認できない水準にあり、危機の社会的影響が広く認識されている。景気回復の強化が重要だ」としながら、「財政計画は各国の事情により異なる、成長促進策に焦点を置く」とした。要するに、財政再建と経済成長の両立をうたった。いわば欧米の主張を足して二で割った、玉虫色の合意しかできなかったのである。
 財政再建については、先進国は2013年までに財政赤字を少なくとも半減させることを確約、16年までに政府債務の実質国内総生産(GDP)比率を安定ないし削減すると確約するとの文言が盛り込まれた。

漁夫の利を得た菅直人

 これに喜んだのが、菅直人ではないか。菅は「財政再建と経済成長の両立」という策を引っ提げて、G7、G20に乗り込んだ。各国首脳に、この政策をアピール。菅は自分の考えが世界に認められたと鼻高々だろう。実際のところは、欧州、米国の妥協の結果として「財政再建と経済成長の両立」が合意されたに過ぎず、漁夫の利でしかないのだが。ただ、サプライズもあった。今回先進国同士、財政赤字解消を確約したのだが、日本はその義務を免れたのである。まだその内容を詳しくは知らず、論評の仕様もないが、菅の鼻がますます高くなるであろうことだけは想像がつく。

追加

 G20で、先進諸国の中で日本だけが「13年までに財政赤字を半減」とする数値目標を免れた。
 日本はサミット直前の財政運営戦略で、15年までにプライマリーバランスの赤字をGDP比で半減、20年度までに黒字化することになっているが、果たして実現できるだろうか。