法人税引下へ

法人税引下げを参院公約に

 民主党は先回の衆院選挙でも法人税の引下げを公約していたが、元々優遇されていた中小企業の法人税率を18%から11%に下げるというもので、中小企業支援に限られていた。菅首相の下、民主党は中小企業に限らず法人税全体を引き下げることを参院選公約に入れるという。

連合は引上げを要望

 小沢時代には考えられない選択肢だ。なぜなら小沢さんはかつての自民党も顔負けの組織選挙主義。最大の支持母体連合が、法人税引上げを求めているからだ。連合がなぜ法人税引上げに熱心かと言うと、法人税が上がれば、税金に使われるくらいなら人件費に回そうと考え、給料も上がるだろうと考えているからだ。

法人税引下げは企業の内部留保を増やすだけでは

 80年から00年までは、家計が国内貯蓄の大きな部分を占めてきたが、00年以降、家計の占める比率は大きく低下し、金融機関と一般企業が比率を伸ばしている。国内貯蓄のシェアにおいて、企業と家計の逆転が生じた背景には、企業が業績回復過程で得た利益を賃金として分配せず、内部留保として蓄積していることが挙げられる。日経は個人の貯蓄率の低下を少子高齢化のせいにしがちだが、実際は労働分配率の低下による影響が大きい。法人税引下げ分が、内部留保に向かうだけであれば景気回復には全くつながらない。高所得者に減税しても消費が増えないのと同じ理屈だ。
 法人税引上げが、景気拡大に向かうような仕組みも併せて取るべきだろう。そうでないと財務省的発想だけで終わってしまう。
 経済成長を言うなら、まず法人に内部留保を吐き出させる税制があってしかるべきではないか。そうすると、法人税引下げより、研究開発、設備投資に対する減税の方を考えるべきではないか。

法人税を引き下げないと海外に法人が移転するのか

 日経なんかは、法人税を下げないと海外に法人が移転すると、叫んでいるが、本当にそうだろうか。欧州で法人税の引下げ競争が激しいのは、欧州は人の流通も活発なため、本社が移転することが容易にあり得る。日本でも国際化は進みつつあるが、欧州とは異なる。さらに産業の空洞化には全く影響がない。海外に生産拠点が移っているのは三つ理由がある。海外の安い労働力、円高リスクのヘッジ、海外消費地へのアクセスがそれだ。どれも法人税とは無縁な話である。米国でも産業の空洞化は進んでいる。企業の業績が絶好調なのに、失業率が高止まりしているのもそれが理由だ。法人税が安くても、グローバル化、水平分業化、モジュール化が進んでいる現代では、途上国に生産拠点が移るのは必然である。

租税特別措置にも大ナタを振るえ

 昨夏の衆院選マニフェストでは「役割を終えた租税特別措置は廃止」としていたが、平成22年度税制改正では、産業界などの反発で、租特の廃止・縮減はわずか1千億円程度の規模にとどまっている。
 民主党参院選マニフェスト政権公約)を検討する「国民生活研究会」役員会は4月30日、租特を原則全廃することで一致している。民主党は「必要なものは恒久措置に切り替える」とも言っており、どこまで本気か心配だ。法人税を引き下げるなら、租特の抜本的見直しをしてほしい。

繰越欠損金制度の見直しは必要ないか

 法人税上、繰越欠損金制度というものがある。単年度で赤字が出れば、その欠損金を黒字年度に持ち越すことができるという制度だ。大赤字を作った場合、翌年度黒字でも税金を払う必要がなくなる。04年度から繰越期間が5年から7年間に延長されている。リーマンショックの07年、法人税14.7兆円、所得税16.1兆円、消費税10.3兆円、それが09年は法人税5.2兆円、所得税12.8兆円、消費税9.4兆円となった。これも繰越欠損金制度のためであるが、同制度の影響はしばらく続く。法人税を下げなくても低空飛行は免れない。
 法人税を軽減する代わり繰越欠損金制度について見直しをすることも考えられていいのではないか。制度をそのまま残すにしても、7年の繰越はあり得ないし、5年も長すぎる。経営のスピード感を殺ぐ制度だ。

銀行はいつになったら法人税を払うんだ

 法人税のことで腹が立つのが銀行が法人税を払わないことだ。メガバンクでいうと、三菱UFJとみずほは02年から、三井住友は01年から法人税を払っていない。
 この間赤字だからではない、空前の黒字決算を上げても、不良債権処理に伴って過去に積み上げた赤字と相殺される、「繰越欠損金制度」のためだ。04年度から繰越期間が5年から7年間に延長されている。このルールは、すべての企業に認められているが、最大の恩恵を被っているのが、不良債権処理で巨額の赤字を抱えた大手銀行だ。公的資金注入では、注入を受けた銀行の多くが、優先株を上乗せなしに買い取れることで、実質的に無利子で大金を借りた訳だし、空前の低金利で銀行はほとんどタダで仕入れてきたキャッシュに利子をつけて貸し付けているため水に色をつけて売っているようなもの。「全ての法人に共通のルール」というのだが、国にあれだけ助けてもらっておきながら、恩をあだで返されているような気がしてならない。
 銀行が税金を払えば、それだけで何兆円という税収が得られるのだが、、、。