中国労働者の意識変化

ストライキ続発による賃金上昇

ホンダの変速機を製造している工場が、5月17日からストライキが続いていたが、ホンダは、現在の月給1544元(約2万800円)を24%賃上げし、1910元とし、6月2日ようやく操業を開始した。
 同時期、台湾企業出資による深センにあるフォックスコン(富士康科技集団)で従業員の自殺が相次ぎ、同工場の労務管理が問題とする、中国メディアによる報道が相次いだ。同工場をはじめ台湾の親会社鴻海精密工業は、中国全土の工場で賃金を3割以上上げた。
 08年中国で労働契約法が成立。その結果、賃金改定に際して企業に労組との協議が義務化され、労働者に一定の賃上げ要求の権利が認められるようになった。現在、合法化された労組は、共産党指導下の労組全国組織・中華全国総工会(組合員数2億2600万人)だけだが、外資工場では「自主労組」を組織し、集団交渉に臨む動きが目立つ。

最低賃金アップ、大国意識の台頭

 また中国国内の各省で今年になって最低賃金が10%以上アップ。例の4兆元の景気対策で内陸部の公共工事で、農民工がそちらに流れ、沿海部が労働力不足になり、それが賃金上昇圧力になっているという面もある。
 さらに中国国民の大国意識も大きく原因している。要するに「中国はすでに経済大国だ。低賃金労働を売りにすべきではない。」という個々人レベルの意識変化である。中国マスコミもそういった空気を読んで、ストライキをあおるし、中国政府も国民に金を回すようにして、共産党政権への支持を高めたいという思惑がある。

国有企業は対象外

 一方、政権は外資工場のストが国営企業に波及することに警戒を強めている。香港メディアによると、河南省の国営繊維工場で今月上旬までに5000人が賃上げなどを求めて2週間ストを続けた際、地元当局は多数の警察官を投入し、強制排除した。参加者の一部はホンダ部品工場のストの写真を掲げ、「彼らには認められたのに、なんで我々はだめなんだ」と訴えたという。
 当局が恐れるのはストの常態化で、賃金や待遇に対する不満が政府批判に発展し、社会不安につながることだ。中国当局者は「当局の思惑を超えるストの拡大は許されない。標的は外資工場に絞られているようだ」と指摘する。
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20100616-OYT1T01067.htm