中国商業銀行大手5行 5兆円調達

中国4大商業銀行

 中国4大商業銀行というと、中国工商銀行(資産総額1兆6074億ドル)、中国銀行(1兆178億ドル)、中国建設銀行(1兆4090億米ドル)、中国農業銀行(4348億ドル)の4行を指す。さらに5大銀行となると、交通銀行が加わる。同行は資産総額は1892億ドルで、他の4行からは随分劣るが、世界の中でも89位である。
 トップの中国工商銀行は06年10月に上海、香港で上場。ゴールドマンサックスも大株主に名を連ねる。同行の資産総額は世界1である。

不良債権が大きな課題

 しかし、同行の不良債権比率が4.6%と極めて高い。同行は04年末で不良債権比率19.1%もあったが、05年中国政府が外貨を取り崩して調達した1620億ドルの巨費を投じて、ようやくこの水準になったのであるが、同行も含めて、他の4大商銀も、似たような事情にある。

地方政府の金融子会社が銀行借り入れで公共投資

 最近新たな問題が発覚した。これら4行を含め、中国の商業銀行が地方政府傘下の金融会社に6兆元(8784億ドル)も貸し付けているというのだ。というのも、中国地方政府は法律上借金=地方債の起債をできないからだ。リーマンショック以降地方政府の財政も潤沢ではないところに、政府が4兆元の景気対策を打ち出したものだから大変だ。その3分の2は地方政府負担。中央からは財政出動を求められるが、財源はない。こうした歪みがこうした簿外の公共投資を生み出している。
 こうした公共インフラが、投資効果のあるものならいいが、汚職が政治風土の中国にあって、投資効果より、地方政府の幹部の懐を潤す効果の方が重視されていることは明らかだ。結果「橋を壊して橋を造る」工事が横行している。

銀監会も監視を強化

 銀監会の劉明康主席は4月11日、海南島ボアオで開催されたアジア・フォーラムで講演したが、その中で地方政府の簿外借り入れについて調査し、6月末までに再評価報告書を提出するよう、金融機関に命じたことを明らかにした。昨年の景気対策で増やした融資の不良化が懸念されているためだ。
 劉委員長発言によれば、金融機関はこうした融資をプロジェクトごとにすべて再評価し、包括的な報告書を提出することが義務付けられる。監督当局はそれを受け、今年第3四半期に立ち入り検査を実施する。検査対象は、昨年の金融機関の新規融資9兆6000億元(約130兆円)の3分の1超に上るという。問題が発見された場合は、監督当局は金融機関に対し融資条件を変更し、担保を積み増すか評価損を計上するよう求める、というものだ。
 同委員長や周小川中国人民銀行総裁はこのところ、地方政府系金融会社向け融資のリスクについて繰り返し指摘している。メリルリンチの推定では、こうした金融会社の債務残高が09年末時点で約7兆元、このうち6兆元が銀行融資となっている。これは中国の年間国内総生産(GDP)の21%で、中央政府の債務残高に匹敵する規模という。 (WSJ日本web版10.4.12)

不良債権解消を政府が迫り、各行資本増強に走る

 大手5行中、唯一未上場だった中国農民銀行が5月4日、香港で上場申請、上海にも近く上場申請する見込みだ。同行は新規株式公開=IPOにより2000億元=293億ドルの資本増強を行う予定だという。自己資本増強は他の商業銀行でも行われる予定だ。中国建設銀行が750億元、交通銀行が420億円、中国銀行が400億元、中国工商銀行が250億元と言われており、中国農業銀行も併せると3820億元=560億ドル前後となる見通しだ。
 これも不良債権問題が絡んでいる。劉明康銀監会主席は4月上旬にはロンドンで行われたフォーラムで「大手銀行には11%以上の自己資本比率を要求する。」と発言した。銀監会は4月中旬、各行に今年9月末までに不良債権に対する引当金を積み増し、年内に処理するよう指示をしたという。

今度への影響

 こうした5大商銀の巨額のIPO、増資がリスクマネーを吸収する分、他の株式には押し下げ要因になってくる。中国政府は4月10日には、今年3回目になる預金準備率の引上げを行っている。不動産ローンへの貸し出し規制等もあって、今後中国株式市場は上値が重い展開になるかもしれない。上海総合指数は、5月4日には年初来最高の2835.27が終値となった。