米国のソブリンリスク

 21日のテレ東の9時からのEモーニングで、かつてジョージ・ソロス氏らヘッジファンドの対日投資助言を日本人で初めて手がけたとされる草野豊己なる人が、ソブリンリスクはギリシャだけにとどまらず、米にも発生しうると警告していた。
 そもそも、米国発の金融危機の元が何かと言えば、ファニーメイフレディマックと呼ばれる米政府系の住宅担保証券会社の発行したMBS不動産担保証券)が原因だ。米国の住宅ローンの半分は、この2社により証券化され、それが世界中にばらまかれていた。この2社は上場企業なのだが、元々は政府保有だったことから、政府支援企業(GSE)と呼ばれ、いざとなったら米政府が保証してくれるだろうという暗黙の了解の下、国債並の信用力を持って取引されていた。しかし、米国の地価低落から、両社の信用不安が増大、株価は1ドルまで下がって行った。当時両社が発行したMBSは5兆ドルもあり、これが暴落すると世界的な経済危機を起こしかねない。そのため、米国は08年9月に再度両社を国有化し、MBSの暴落を防いだ。しかし、これは問題の根本解決ではない。単に両社のリスクが米政府のリスクに置き換わっただけだからだ。
 国有化によって、「両社発行MBSの価格維持=政府の財政破たんの防止」となったため、市場が買わなくなったMBSFRBがどんどん買いまくった。そのためFRBの資産は2倍にも膨らみ、今や、その半分がこのMBSなのだ。
 先の草野豊己氏が心配するのも、まさにそこにある。というのも、米国不動産価格は低迷したままだし、失業率も回復しない。そうなると今後も住宅ローンのデフォルトは高止まりどころか、さらなる上昇さえ予想される。FRBも今年の3月末でMBSの買い取りをストップしている。今まで最大の買い手だったFRBが手を引いた。4月いっぱいで住宅減税も終わる。今後、MBSの価格がどうなるかは、神のみぞ知るだ。
 今週金曜日26日には米新築住宅販売件数が発表になるが、今後もこの数字を注視する必要があるだろう。
 草野氏は、米国債金利が今年の3月には民間長プラ金利を上回ったことに注目していた。国の信用が民間企業の信用に負けてしまっているのである。草野氏はそこに米国のソブリンリスクの可能性を読み取っているとのことだ。
 このような事情は米政府だけではない、先進諸国各国が財政出動・金融緩和を積極化している。ただそれは「民間のリスクを国が肩代わり」したに過ぎない。ギリシャ危機は他の国にとっても対岸の火事ではないのである。