米雇用は大丈夫か

米雇用足踏みか

 米経済は10−12月期のGDP成長率が前期比年率5.9%と2四半期連続のプラス成長となり、改善方向を見せている。設備投資も6.5%という堅調な伸びを見せた。
 そのような中で、企業向け給与計算サービスのオートマチック・データ・プロセッシング(ADP)子会社などが集計した3月のADP全米雇用報告は、民間部門雇用者数が予想に反し2万3000人減少した。市場は、3月の米雇用統計が堅調な内容になるとの予想で盛り上がっていた。ロイターがエコノミスト35人を対象にまとめた予想の中央値は4万人の増加だった、という。非農業部門雇用者数は過去数週間ほぼ安定して上方修正されてきただけに、このニュースは意外感をもって受け止められている。

市場の見方はバラバラ

 市場の見方としては、。雇用改善のトレンドが終わり、逆転するという見方がある一方、米労働省が4月2日発表する3月の雇用統計では非農業部門雇用者数が増加するだろうという観測もある。

日米エコノミストの見解

 概して、米国のエコノミストは楽観論が多く、日本のエコノミストは懐疑的な見方が多いように見える。
 大和総研は次のように分析している。

  1. 確かに10−12月期の実質GDPは上方修正されたが、修正された中身をみると、バランスが悪くなった。
  2. 需要項目別に寄与度の変化をみると、個人消費の寄与度が0.21%ポイント低下。
  3. 財に対する支出は自動車や娯楽関連耐久財、食品を中心に上方修正されたが、サービス支出は住居に関するサービスやその他サービスの当初のプラス幅が小さくなってしまった。
  4. 政府支出が0.21%ポイント低下。連邦政府の寄与度が変らなかったので、悪化の主たる要因は州地方政府の、なかでも投資部分の寄与度の減少が原因だ(1.1%減から8.9%減に拡大)。
  5. 外需の寄与度は0.2%ポイント縮小。輸出の伸び率が22.4%増に拡大したが、輸入も15.3%増に拡大し、輸出のプラスを輸入のプラスが消してしまった。
元気がない個人消費、地方政府

 企業業績は良くなっているが、個人消費は元気がない。米国の1月失業率が9.7%もあり、12月に比べて失業率が上昇した州は31州に上り、09年1月と比較すると全州で失業率が上昇している。これでは個人消費が伸びるわけがない。
 オバマ景気対策で大金をばらまいているが、大企業が中心。政府から金をもらった大企業は、これを元手にアジア等の新興国へ投資し、企業は業績を回復しているが、国内で労働者を雇うことには使っていない。
 日本ではオバマが清廉な政治家のように思われ、実際そう信じられて大統領になったのだが、実態はかなり違う。連邦選挙管理委員会公表のデータでは、オバマが集めた選挙資金は、7億5000万ドルにも上るが、小口資金は全体の4分の1で、後は圧倒的に企業や団体からの大口献金が占めている。最高額大口献金者のトップクラスはゴールドマンサックスやシティグループなどの金融大手、エクシロンのような大手エネルギー企業、ナショナル・アミューズメントなどの巨大メディア企業がずらりと並ぶ。オバマがばらまいた金は雇用の改善には役に立っていない

地方政府の財政難

 また地方政府の支出も思わしくない。地方政府は税収の急激な落ち込みから財政難に陥っている。1929年の世界大恐慌の時も、ニューディール政策により中央政府は支出を増やしたが、地方政府の財政支出が落ち込み、景気回復が遅れたという事実がある。

米雇用統計(10.4.4追加)

 米労働省が4月2日発表した3月の雇用統計(速報値)によると、景気動向を敏感に反映する非農業部門の就業者数は、前月比16万2000人増と、2月の1万4000人減から2カ月ぶりのプラスに浮上した。2月の大雪で前回の雇用統計の集計が一部遅れた地域もあり、そうした地方では先月は新規就職者数を中央に送れず、その分を3月に送ったため、今月分は水増ししたものになっている。また今年は国勢調査のため、政府は大量の調査員をバイトで雇うことになるため政府雇用も増加する、こうしたこともあり、市場も非農業部門労働者数の増加を織り込んでいた。前統計値はそれらの市場の予測を上回るスピードで改善していることになる。
 しかし、米労働省発表の非農業部門就業者数が、本当に信じてよいものなのかどうかという疑念も、一部で持たれている。昨年09年の速報値と確定値とが、以下のようにかなり違っていることが、このような疑念をかきたてている。こうした疑念が、果たして正当なものか断じがたいが、経済的な理由でパートタイムを余儀なくされている人などを含む広義の失業率は前月の16.8%から16.9%に小幅上昇しているし、27週間以上職に就いていない長期失業者数も前月の613万人から654万人に増加し、失業者全体の44.1%を占めており、しばらくは注視が必要かもしれない。
09年12月 -8.5万人 → -15.0万人
11月   +0.4万人 → +6.4万人
10月   -12.7万人 → -22.4万人
9月   -13.9万人 → -22.5万人
8月   -15.4万人 → -21.1万人
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