健康保険料、大幅アップ

協会けんぽ、保険料率アップ

 中小企業の従業員やその家族ら約3500万人が加入する全国健康保険協会協会けんぽ=旧政管健保)の健康保険料は現在、全国平均で8.2%だが、これが、4月には9.34%に上がる。組合員の平均的な収入は年収374万円だが、同年収だと本人負担が1カ月で約1600円増え、年間では約2万1000円増える計算だ。
 協会けんぽの収入の大半は、被保険者(加入者)と事業者が折半で納める保険料。一昨年来の不況で、被保険者の給料は大幅に減少。協会けんぽの収入も減っている。さらに高齢化による医療費の増加も影響している。
 さらに後期高齢者医療制度も影響している。75歳以上の後期高齢者医療制度の財源は、75歳以上の高齢者が支払う保険料が1割、公費5割、各医療保険者(協会けんぽ、健保組合、国保など)が拠出する支援金が4割という構成になっています。協会けんぽ後期高齢者支援金は年々上がっており、平成08年度は1.3兆円だったが、09年度は1.5兆円に増えている。65〜74歳の前期高齢者の多い国保へ、若年者の加入の多い協会けんぽや健保組合などから、「前期高齢者納付金」という方法で医療費負担を調整する制度もあり、これの負担も08年度は9500億円だったのが、09年度には1.1兆円にも増えている。
 さらに地域格差の問題も今後生じてくる。以前は全国一律の保険料だったが、09年10月からは、加入者の年齢構成や所得水準の違いを考慮した上で、加入者にかかった医療費が多い都道府県は保険料が高くなり、少ない地域は保険料が安くなる仕組みに変わった。地域ごとに保険料に差をつけることで、生活習慣病の予防など医療費抑制の努力を地域ごとに競わせる目的だ。現在は、保険料の格差を縮める「激変緩和措置」がとられているが、激変緩和措置も年度を追って徐々に緩和の度合いを減らし、13年9月には全廃される。4月からの保険料は、北海道(9・42%)と長野県(9・26%)との差は0・16ポイントだが、これは徐々に広がる。ただ厚労省も、激変緩和措置の延長も検討している。
 09年度の収支は6000億円の赤字、準備金も底をつき、4500億円の借入になる見通しだ。
 介護保険料も、健康保険分と同様の理由で、今の1・19%(労使折半)から4月以降は、1・5%(同)に上がる。
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/seikatuzukan/2010/CK2010030702000136.html

企業健保も保険料率アップ

 大手企業の健康保険組合も保険料率アップするところが続出している。日産自動車は7.28%から8.02%、大日本印刷は6.1%から7.1%、富士フィルムは6.1%から7%、関東百貨店組合は6.8%から8.4%と、大幅なアップとなっている。これも協会けんぽと同様の理由からだ。給料、賞与が減る一方で、後期高齢者への負担金が増えている。07年度までの組合の保険料収入の35%前後だった後期高齢者医療制度への負担率が、09年度には45%前後にまで上昇している。
(日経10.3.16)

西濃運輸は勇み足?

5万7000人が加入する西濃運輸健保組合は、08年8月解散した。前期高齢者納付金25.25億円と、後期高齢者支援金21.1億円の負担が新たに生じ、保険料率が月収の8.1%から10%以上に引き上げる必要が出たがが、協会けんぽの保険料率がこれより低い8.2%だったため、協会けんぽに乗り換えたのだ。しかし協会けんぽも保険料率アップは避けられない。西濃運輸の場合、現在は移って正解だったかもしれないが、今後も移動が有利に働くかは分からない。