中国政府の米国債売却 百害あって一利なし

 現在、米国内で「人民元の対ドルレートが現実の相場より40%も安く固定されていて、米企業に不利になっているから、為替操作国に認定し、報復関税をかけるべき」という議論が盛んになされている。しかし、慎重論も強い。中国は世界最大の米国債保有国。もし報復関税をかけたら、中国がその報復として米国債を売って、米国は打撃を受けるのではないか、というのがその理由だ。
 ポール・クルーグマン教授も、アメリカは恐れるべきことはないとコラムで書く。
「中国が大量の財務省証券を売却すると、確かにドルの価値はユーロなどの主要通貨に対して下落するだろうが、それはアメリカにとってむしろいいことだ。アメリカ製品が国外で競争力を高めると同時に貿易赤字が減少する。むしろドル資産を大量に抱える中国の方が困るはずだ」
 ワシントンにあるシンクタンク、ピーターソン国際経済研究所のジョー・ギャグノン研究員も、中国がドル資産を売っても不利になるのは中国だと述べる。
財務省証券を売っても、アメリカが受ける影響は驚くほど小さいことを中国は知るべきです。むしろドルの価値を下げるという目的は外れると思った方がいい。ドルが売られても、結果的にドルはアメリカに再投資されるだけです」
参考:http://president.jp.reuters.com/article/2010/03/19/8F5F67F6-3312-11DF-87EC-08BA3E99CD51.php