人民元問題

温家宝首相は人民元の現相場は妥当と表明

 中国の温家宝首相は3月14日、全国人民代表大会全人代、国会に相当)の閉幕にあたって記者会見し、「人民元が過小評価されているとは思わない」と述べ、人民元の切り上げに否定的な考えを述べた。

人民元相場は中国政府の管理下に

 人民元は、政府当局が厳しい通貨管理を行っており、実質ドルとの固定レート制になっている。中国経済の発展の度合いからすれば、人民元の対ドルレートが上がってしかるべきなのに、上がらないことに、米議会を中心に反発が強まっている。米議会では今の人民元の対ドル為替レートは40%ほど割安だという意見が定説になっている。40%割安となると、中国からの輸入品は40%安になっていることになり、当然米国産製品の分は悪い。輸出企業にとっても、ライバルの中国企業の商品が、為替によって価格上有利になっているのは許せない。
 財務省は年2回為替報告書を発表しているが、次がこの4月。このため人民元問題が米議会で盛んに取り上げられている。米上院のシューマー議員(民主)など14人で構成する超党派上院議員団は3月16日、中国が通貨安政策を改めようとしない場合、相殺関税を課す法案を提出すると発表した。法案は、各国の為替政策が、財務省が作った客観基準に該当した場合、自動的に通貨操作と認定し、対象国との交渉を財務省に義務付ける、というものだ。
 米国議会は11月に中間選挙を控え、勢い選挙民向けの発言が多くなる。中国を為替操作国と認定するかどうかは、政治的な判断要素が絡んでくるから、大統領の決断が求められよう。もし為替操作国と認定されれば、報復関税も検討されることになる。
 オバマ大統領も、輸出の拡大を政策の重要課題に掲げており、そうであれば、人民元切り上げを図らなければならない。しかし、オバマ大統領としては米国債を中国に買ってもらわないと、国債の発行が難しくなるという台所事情もあって、穏便に済ませたい。オバマ大統領は、結局は中国を為替操作国と認定することはないだろう。ガイトナー蔵相が中国を為替操作国と認定することに消極的な発言をしているのも、それた理由だ。

中国の事情

 中国も、好景気に沸いているが、これも政府の積極的財政、金融緩和政策があっての話だ。中国政府は内需拡大を目指しているが、内需拡大には、社会制度改革もともなうため、時間がかかる。とすればしばらくは外需頼みとならざるを得ず、そうなれば人民元切り上げには応じられない。もっとも、中国内でも、輸出企業は人民元切り上げに反対だが、内需産業の中には人民元切り上げを求める声もある。中国は諸外国の圧力に応じることはないが、こうした国内要因で人民元切り上げに進むことはある。しかし、それは今年の後半になりそうだ。
※ 参照ニュース 3月15日、19日 ロイター

追加

 中国の陳徳銘商務相は3月21日、米国が中国を為替操作国と認定して貿易制裁を行った場合、中国は報復措置を講じると述べた。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-14444520100322

GDPの伸びと今後の不安

 中国の10年1〜3月期のGDPは前年同期比実質11.6%増。09年10〜12月の10.7%から一段と加速している。しかし、高成長に最も貢献したのは活発な投資で、成長率を6.9%押し上げた。投資に傾き過ぎると生産過剰の問題が生じてくる。
 消費も勢いがある。自動車販売は4割近く、家電販売は3割近く伸びた。しかしこれも優遇税制等あったためであり、それがなくなれば、これらの商品の需要も伸び悩むか落ち込むかするしかない。