EU加盟国 ギリシャ支援の足並に乱れ

ユーロ財務相理事会は、3月16日、ギリシャへの支援を行うことで合意した。しかし、同合意では「ギリシャ財政再建策は十分で、現時点では支援は不要」として、支援の具体的内容は明らかにしなかった。
 ギリシャ政府としては不満のある内容だろう。ギリシャ政府は、緊急支援が得られるように、国内世論の反対を押し切って、加価値税(VAT)の増税等、痛みを伴う財政改革を打ち出した。そうしたら「それだけ頑張れば、うちが手を差し伸べなくても何とかなるだろう」と言われてしまったのだから。
 ギリシャは、3月4日に40憶ユーロの国際発行を無事達成した。ユーロ圏内の投資家にとって、ユーロ建てであるため、為替リスクはなく、ソブリン・リスク(政府のデフォルトリスク)だけを考えればいい。しかしそれもEU支援策を期待してのことであれば、今回の空手形で、失望を生みかねない。ギリシャは4〜5月に200億ユーロの国債発行を控えており、これへの悪影響が懸念される。
 EUが支援すると言っても、EU自体が支援するのではなく、加盟国による2国間援助。しかし、加盟国の考えはバラバラ。仏は支援の意向もあるようだが、独伊は「いざとなればIMFから支援を受ければいい」という考え方だ。独伊が支援を行わなければ、仏も「単独で動くのは馬鹿らしい」ということになるだろう。EUには通貨の安定という大目標があるだけで、個々の国の財政リスクは自己責任というのは分かる。リスボン条約もEU、加盟国が他国の財政の肩代わりをすることを禁じている。しかし、ギリシャ財政破綻となれば、他のPIIGS4国(スペイン、ポルトガルアイルランド、イタリア)EUの無力さを示しているとしか思えない。
 ただギリシャにも大きな責任がある。ギリシャは前政権が国家財政を粉飾決算して赤字を少なく見せていたからだ。因果応報と言えば言えるが、被害をこうむるのは国民だ。
 ロイターは、今回発表された支援合意で不明瞭な点として、以下の点を挙げている。

  1. 支援策が発動されるのは、当面必要な資金調達ができなかった場合に限られるのか、それもも調達コストが高くなり過ぎそうな場合も含まれるのか?
  2. ギリシャに資金提供する際の適切な金利は、誰がどのように決めるのか?どの程度の支援を行うことができるのか?ギリシャが今年調達が必要な金額は530億ユーロで、そのうち130億ユーロをすでに調達している。
  3. 支援は二国間ベースで行われるのか、スタンドバイ取り決め(IMF支援に見られる貸付枠内でなら援助を都度都度で行う仕組み)に沿って行うのか?
  4. また、資金拠出は執行された歳出削減やリストラ策に応じて段階的に実施されるのか?

参考:3月16日ロイター、17日付日本経済新聞朝刊