日本にとって、ギリシャは対岸の火事ではない

ギリシャ超緊縮財政へ

ロイターによると、ギリシャ内閣は3月3日、市場の不安を招いている財政赤字を削減し、欧州諸国から支援を受ける環境を整えるため、総額48億ユーロ(65億ドル)に上る新たな緊縮財政措置を決めた。48億ユーロの半分は支出削減で、残りの半分は増税で賄われるという。
 EUは、加盟国に、財政赤字をGDPの3%以内に抑えるように求めている。しかしギリシャは12%を超えている。このため、ギリシャ国債価格が急落した(長期金利上昇、CDS上昇)。当初はEUも、ギリシャの自助努力に任せることで乗り切ろうとしたが、同じく財政赤字が大きいスペイン等にもこうしたソブリン・リスクが広がらないか、さらにはユーロ全体に信用危機がおよばないかが危惧されるに至り、ユーロ圏内の経済大国である独仏もギリシャへの援助が求められるようになった。
 独仏も、自国の財政でさえ厳しい中で、他国の財政を救うとなると、国民の理解が得られない。そのためにも、「ギリシャも自ら血を流してよ」ということなのだ。国家財政が厳しいPIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランドギリシャ、スペイン)には、独仏の銀行も巨額の金を貸しこんだり、国債を購入している。だから、対岸の火事ではいられない。ギリシャの財政危機なら小火で済むが、イタリア、スペインにまでソブリン・リスクが広がるとなれば、独仏も無傷ではいられない。小火のうちに火を消し止めざるをえないのだ。

対岸の火事ではいられない日本

増税路線を支持する(法人税は減税)日経は、盛んに「ギリシャの次は日本」と、大騒ぎをしている。しかし、巨額の国内貯蓄を有し、対外収支も黒字、外貨も十分備え、政府資産も巨大、国債は国内で消化が可能、リスクをとれない銀行も国債購入にいそしんでいる日本において、ソブリン・リスクは低い。ただ、高齢化社会が進み国内貯蓄も先細りをしている日本では、中長期的に見た場合、ソブリン・リスクが高まることは否定できないだろう。
通貨危機が起こった場合、当該政府から要請があれば、IMFは緊急融資をして、危機の拡大を防いでくれるのだが、IMFはその代わりワシントン・コンセンサスと呼ばれる財政緊縮策、自由化策を被援助国に要請してくる。この場合、IMFが要求するプログラムは極めて厳しいものである。これに関して言うと、ネバダレポートというものがある。日本が破綻し、IMFが日本を管理下に置く場合、日本をどうするかということをレポートしたものであり、IMFに近い筋の専門家がまとめたとされているものだ。02年2月14日の衆議院予算委員会民主党五十嵐文彦議員の質問の中でも、このレポートの存在が触れられている。このレポートによれば、もしIMF管理下に日本が入った場合、以下の8項目のプログラムが実行されることになっている。

  1. 公務員の総数、給料は30%以上カット、及びボーナスは例外なくすべてカット。
  2. 公務員の退職金は一切認めない、100%カット。
  3. 年金は一律30%カット。
  4. 国債の利払いは5年から10年間停止。
  5. 消費税を20%に引き上げる。
  6. 課税最低限を引き下げ、年収100万円以上から徴税を行う。
  7. 資産税を導入し、不動産に対しては公示価格の5%を課税。
  8. 債券、社債については5〜15%の課税。
  9. 預金については一律ペイオフを実施、第二段階として預金を30%から40%カットする。

 ギリシャは日本にとっても対岸の火事ではない。