民主党の進める「取調べの全面可視化」
冤罪は密室で作られる
捜査は警察署、検察庁の中で行われ、弁護士の立ち会いは許されない。こうした密室の中で、時に真意でない自白が求められ、自白したこと、ときには自白していないことまでが調書化され、それが裁判での最大の証拠になる。
例えばやってもいないことを自白するように求められたとする。そうしたとき警察は「共犯の某が君がそこにいたと言っているんだ。実際その日のアリバイはないだろう。警察としては君がそこにいたと考えざるを得ない。だからそれを前提に調書を書かざるを得ない。君にも君の理屈があり、立場があるだろう。それは分かる。ただ、こちらにも理屈があるし、立場がある。それも分かってほしい。現状では、調書はこれまでの捜査結果を前提に書かざるを得ない。君が争うなら、裁判所でそう主張すればいいだろう。」などと言って、本人の記憶に反する調書を作り、本人にその調書に署名、指印を押させることもある。
では、訴訟になったらどうなるか。警察は、自分が話したことを全部否定し、取り調べに当たった警官を証人尋問しても「取調べ中、共犯が君もそこにいたぞ、と言っていたぞ。実際のことを言ったらどうなんだ、と言いましたら、本人が自分もその場に立ち会ったことを認めましたので、その旨調書を作りました。」と証言するだろう。
取調べの可視化とは
これを防ぐには「取調べの可視化」、すなわち、「取調べの様子をビデオに撮って、裁判の場でもどういう取調べが行われたかを、検証できるようにする」必要がある。しかも全過程を撮影する必要がある。理詰めの取調べで、逃げ道がないように思わせ、その上で警察の作ったストーリーを自白させる。そうした上で、「じゃあ今言ったことをもう一度言ってくれ。ビデオに撮るから」と言って、撮ったからといって、それは調書を証拠にとるのと殆ど変らない。
ただ、この時期に、「取調べの可視化」を民主党が言うと、小沢の件での意趣返しかと言われる。ひょっとしたら、そういう狙いもあるかもしれない。しかし、結果的に良いことは、動機がどうあれ実現してほしい。民主党はマニフェストでも捜査の可視化をうたっている。願わくは、「小沢さんを不起訴にしてくれたから、可視化の主張は引っ込めよう」などとしないことだ。