住宅ローンの金利に思うこと

住宅ローン金利、固定金利と変動金利

 住宅ローン金利が下がっている。これは日銀の金融緩和政策の結果、長期金利が下がっているからだが、各銀行の営業努力もある。殆どの銀行が優遇金利を設定、年1%を切ることも珍しくない。
 しかしここでいう金利は変動金利である。住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)の固定金利とは異なり、市場金利が上がれば、ローンの金利が上がる仕組みだ。低金利時代の現在、変動金利は人気が高く、5割を超えた。しかし変動金利の仕組みをよく知っておかないとしっぺ返しを食うので注意してほしい。

変動金利型とは

 金融機関によっても違うが、通常年に2回、金利が見直される。通常新規融資の金利が、短期プライムレート(優良企業への貸出金利)に連動して変わるが、これの2カ月後に既存融資の金利も変更される。
 ただ、しばらくは、金利が変わっても返済額は変わらない。通常、変動金利型の返済額は5年間一定にされている。5年間は金利が上がっても返済額は増えず、逆に金利が下がっても返済額は減らない。  しかしここには大きな落とし穴がある。金利が上がれば、返済額の多くが利息の返還に回り、元本の返済が進まないからだ。例えば25年ローンを変動金利で組み、金利が急上昇したため5年後、元本が当初予定の半額しか減っていないということも起こりえる。そうすると残りの20年間でローンを完済するには、毎月の返済額も増額されることになる。

固定金利と変動金利の違いとは

 固定金利と変動金利の違いは、将来の金利上昇のリスクを銀行とお客のどちらが取るかという点にある。将来の金利上昇のリスクを銀行が取るのが固定金利型、お客が取るのが変動金利型ということだ。

今後金利はどうなる

 現在は日銀の政策金利は年0.5%。長期金利は年1.320%(本日現在)であり、そのため市場金利も低い。しかし、これは不景気脱出のため、金利を極端に下げて、お金の回りをよくしようとしているからにほかならない。今後金利は確実に上がる。
 金利の基準となるのが、長期金利、すなわち、10年物国債利回りだ。しかし、現在のように赤字財政の穴埋めのための国債増発が続くと、国債の信用低下=長期金利の上昇になる。
09年度の国債発行額は53兆4550億円。歳入総額に占める国債発行額の割合(国債依存度)は、初めて50%を超えた。基礎的財政収支(借金なしでの財政収支)は過去最悪の34兆円の赤字となった。09年度末時点の借金残高は国地方併せて825兆円で、対GDP比171%と、08年度の156%を大幅に上回る。
今までは国内の豊富な個人資産が、国債増発を支えてきたが、今後はそうは行かない。理由は高齢化である。現役を引退した世代は、貯金を下ろして生活することになるから、貯蓄率は減る。現在貯蓄率はぎりぎりプラスだが、数年のうちにはマイナスになると言われている。
 最近米国格付大手のS&Pが、日本国債の格付けを1ランク下げたが、これも日本の国債の将来を危惧してのことだ。
 こういうと、国債の増発は続いているが、長期金利は安定しているではないかという声が上がるかもしれない、確かにそうだ。安定している。しかし、これは景気が悪く、企業が設備投資にお金を使わないからだ。企業が設備投資に金を使わなければ、銀行も貸す当てがない。お金を遊ばせておいてもしょうがないから国債を買おうということになる。それに国債はリスクウェイトがゼロ。だから、中小企業に貸すより、国債を買った方が自己資本比率が高くなるというメリットがあるからだ。(BIS基準も「角を矯めて牛を殺す」だね)
 因みに住宅ローンもリスクウェイトは低い、数年前の新BIS基準では、35%だったが、、。だから銀行は住宅ローンに熱心なのだ(銀行は栄え、企業は衰退する)。