中国人民銀行と中国政府は、金融政策で一致しているのか

中国のGDP増加はマネーサプライの増加のおかげでは

中国国家統計局は1月21日、09年通年の名目GDPは33兆5353億元(約450兆円)で前年比8・7%の伸びを確保した、と公表した。中国政府の公表する数値が信用できないことは、1月11日付のブログでも書いたが、仮に名目GDPの8.7%の成長が本当だとしても、中国政府によって、かなり下駄をはかされての数字だ。中国政府は、07年10月に4兆元の景気対策を発表、窓口指導で09年には9兆元以上銀行融資残高を増やしている。この結果、中国のマネーサプライが、09年には前年比30%もの伸びを見せている。

過剰流動性によるバブルの心配

こうしてばらまかれたお金がどこに行ったかというと、国有企業の無駄な設備投資や、不動産や株に回っている。公共投資も「道路を壊して、また作る」といった無駄な投資に使われている。そのため株も不動産も上がっている。投資目的のため、空き家のまま高級マンションも多いが、他方庶民は、住居を買いたくても、高くて買えない、という状況になっている。中央政府カリカリ来ているが、銀行も国営企業や富裕層と癒着しているのでどうしようもない。

中国政府は銀行融資のさらなる増加を指示

中国政府は、供給過剰になっている鉄鉱業等に対する予融資を抑制する等、野放図な銀行融資を止めるよう指示している。金利を上げるのも一つの方法だが、それができないということは、景気がまだ十分立ち直っていないからだろう。中国中央経済工作会議は、今年10年の銀行融資残高の増加額の目標を7兆5000億円とした。(09.12.30日経)。

銀行の過剰融資と人民銀行の預金準備率の引き上げ

 しかし、中国政府は09年の銀行融資残高増加額目標を5兆元としたのに、実際の増加額は9兆元を超えてしまった。前年より多い、7兆5000億元という目標を定めることで、銀行はGOサインと受け取ってしまったようだ。今年1月前半の2週間だけで、総額1兆1000億元もの銀行融資が行われた。とくに、中国工商銀行は1640億元、中国銀行は1670億元と突出している。中には、2週間ですでに2010年の通年枠の半分強を融資した銀行もあるという。
 それへの反発だろうか。人民銀行は1月12日、18日から銀行の人民元預金準備率を0.5パーセント引き上げると発表した。要するに銀行からお金を吸い上げることで、マネーサプライを減らし、投機を抑制しようということだ。
さらに、人民銀行は、突出した貸出を行った中国銀行中国工商銀行に対して、懲罰として預金準備率の0.5%ポイント引き上げを命じた。

中国政府と人民銀行とが対立か

 こうなると、中国政府(中国共産党と言った方が正確か)と人民銀行との対応の違いが気にかかる。政府は融資残高増加額を昨年の1.5倍に引き上げたが、人民銀行は預金準備率を引き上げた。金融政策がまったく反対の方向を向いている。そもそも、人民銀行は、今年の融資残高増加額の目標も09年並みの5兆円程度に抑えようとしたが、政府が押し切ってしまったらしい。政府は上げ潮派、人民銀行はバブル警戒派という構図があるのだろうか。

権力闘争にも影響か

 中国共産党では、胡錦涛を頂点とする共青同グループと、江沢民を頂点とする太子党(党幹部の子どもたちの意味)がある。ざっくり言えば、共産党を守るためには冨の公平な分配が必要と考えるのが共青同グループで、共産党の権力集中を維持し、党幹部が資本を独占して然るべきと考えるのが太子党である。太子党は地方党幹部の意向を反映しており、共青同グループは貧富の格差是正等を唱える親民派が多い。
 胡錦涛が現在中国のトップで、温家宝胡錦涛と同じ共青同グループに所属する。胡錦涛の権力も盤石ではない。ポスト胡錦涛の地位を意味するという国家副主席の椅子は、胡錦涛が推した李克強ではなく、江沢民の推す習近平のものになった。銀行融資残高の増加は、太子党が喜ぶ政策である。では人民銀行は胡錦涛派か。全く分からない。
ひょっとして中国で資産バブルが崩壊したとしたら、胡錦涛ら共青同が「そら見たことか」と実権を握り、習近平を追い落とすかもしれない。
 
※素人の与太話として受け取ってください