消費税増額の気配

閣僚から消費税増税

 菅財務相は1月10日、NHKの番組で、「この1年は徹底的な財政の見直しを中心にやるべきだ。その上で必要な議論は消費税だろうが環境税だろうがやっていく」「(消費税を)議論することをだめだとは言っていない。」「無駄な経費などの組み替えをやらないまま、次の増税を考えると、結局無駄なものが残ってしまう。」と述べた。
 仙谷国家戦略相は、10日の徳島市での記者会見でも、「社会保障を維持するためには消費税の議論は避けて通れない。参院選前にやるやらないというのではなく、基礎的な部分は用意しないといけない」と述べ、税率引き上げの議論を早く始めるべきだとの考えを示した。

消費税の増税は不可避

 消費税(付加価値税=VAT)を世界各国で比較すると、ノルウェーデンマークが25.0%、アイスランドが24.5%、イタリアが20%、フランスが19.6%、ドイツが19%、イギリスが17.5%、ニュージーランドが12.5%、フィリピンが12.0%、韓国、オーストラリアが10.0%、スイスが7.6%、シンガポール、タイが7.0%、カナダ、台湾、日本が5.0%である。
 ただ単純に数字だけで比較できない部分がある。EUは付加価値税の最低税率を15%としているが、市民生活にかかわる商品やサービスでは原則5%までの税率引き下げを加盟国に認めている。税率軽減の対象は、食品や医薬品、書籍・新聞、映画の入場料などだ。例えばイギリスは食品、教育関連、子供服、居住用の建物は消費税(付加価値税)がかからない。フランスでは、サルコジ政権が、飲食店における付加価値税も19.6%から5.5%に軽減した。財務省は、消費税率の国際比較をHPに載せて、日本の消費税が低すぎると強調しているが、税制度全体を見ないと正確な比較はできない。
 ただ、それでも、日本は税負担は欧米に比べて軽いことは事実である。最終的には消費税の増額は避けられないだろう。民主党も分かってはいるが、今まで口には出してこなかった。しかし政権党になると、やはり、現実に直面せざるを得ないということだ。

橋本政権時代の悪夢

 しかし、現時点で増税議論をするのは危険だ。かつて、橋本政権がそろそろ景気も回復基調にあると見て、財政緊縮路線に舵を切り、消費税を3%から5%に増額した。しかしこれが大失敗だった。結局消費が低迷。以後、持ち直しかけていた景気が再び悪化し、景気の停滞を生んだのである。

小沢の国民福祉税構想、再び

 94年2月3日、細川護煕首相が未明に記者会見を行い、消費税の税率を当時の3%から7%に引き上げ、その使途を福祉目的に充てるとした、国民福祉税構想をぶちあげた。これは、小沢一郎(当時新生党)と、斉藤次郎(当時大蔵事務次官で、小沢さんの意を察した、亀井さんの決断で日本郵政の社長トップに。)のアイデアだとされている。事前の根回しも全くなく、まさに「寝耳に水」の発表だった。国民から猛反発を受け、結局5日後の2月8日には撤回した。このこともきっかけとなって社民党との関係がますます悪化。結局社民党が連立を離脱、自社さ政権誕生へとつながっていく。小沢一郎にとって、掴みかけた長期政権を失う結果となる、人生最大の失策だった。
 小沢さんもこのときのリベンジを狙っている筈だ。しかし、突然ぶちあげての中央突破が無理なことを学んでいる。まず「予算の無駄遣い」という外堀を埋めてから、「やはり減らそうとしたが限界があった」と、今度は国民世論と言う内堀を埋めようというのが小沢さんの戦略ではなかろうか。