武富士が社債の前倒し

武富士社債の前倒し償還

格付け会社スタンダード&プアーズは17日、消費者金融大手の武富士の格付けを「Bマイナス」から「CC」へ4段階引き下げたと発表した。CCは投機的要素が最も強いとされ、その下は債券の一部を償還しない「SD(選択的債務不履行)」となっている。
 武富士は11月16日、2018年を償還期限とする転換社債(700億円)について400億円分を上限に、額面の50%以上の現金か、25%以上の現金と残額分の普通社債に希望に応じて交換すると発表した。S&Pは「交換が成立すればSDにあたる可能性が高い」としている。(2009年11月17日22時40分 読売新聞)

社債の前倒し償還とはどういう意味か

 社債とは会社の投資家に対する借金である。たとえば2008年に、投資家から1000万円を借り、2018年に年利10%をつけて返すという約束をしていたとする。ところが会社の業績が悪化してくると、投資家としては、10年後に本当に返してもらえるか心配になる。そうしたときに会社が今なら1000万円の社債を500万円で引き取ると投資家に持ちかけたとしよう。そうした場合、10年後には社債が紙くずになると思えば、500万円でも受け取っておいたほうがいいというふうに考える投資家もいるだろう。一方会社の方も10年後に2000万円返さなければならないのが、現時点で500万円で処理できるならそれはメリットにになる。また会社の決算上の数字も500万円払うことで1000万円の借金が消えるのだから、決算を黒字化することができる。
 米銀が今年5月のFRBのストレステストに際し、財政を黒字化するのに使った会計手法がこのやり方だ。彼らは、社債を今前倒しで償還すれば、これだけの利益が出ますよ、と言って社債債務を圧縮したのだ。この部分の数字は、業績が悪くなればなるほど上がってくるという、傍目ではおかしなものだが、実際、米銀はこういった手法も使ってストレステストを切り抜けたのである。
※米銀は、前倒ししたと仮定すればこれだけのプラスが出るとして決算上そのプラスを計上したに過ぎず、実際に繰り上げ償還したのではない。

武富士のB/S

 武富士のバランスシートはそれほど悪くない。今年5月発表の武富士発表の業績見通しによれば、今期末は2648億円の赤字を予測している。しかし武富士の場合、貸付金と現預金の総合計が8850億円もあり、今年1年以内に返済すべき負債は1060億円と、資金繰りからいえば、アイフルに比べてだいぶ余裕がある。
 アイフルは貸付金と現預金の総合計が1兆3700億円、今年1年以内に返済すべき負債が約6400億円ですから、ADRは必至の状況でした。
※ただアイフルは、ADR手続が完了し、銀行から支払猶予を受けられれば、倒産は免れる可能性が大ではないでしょうか。