オバマ、17日胡錦涛会談での勝負どころ
オバマ訪中へシンガポール出国
APEC首脳会議に出席するためシンガポールを訪れていたオバマ米大統領は15日夜、次の訪問地・上海に向けて出発した。16日に中国の若者との対話集会に臨み、17日には胡錦濤主席と会談。気候変動や為替、貿易摩擦などの問題を話し合う。この中での一番の勝負どころが人民元の為替操作の問題だろう。
中国にはオバマの弟が住んでいる。弟との再開といった、仕掛けも用意されているかもしれないが、友好ムードはそこまで。17日の胡錦涛会談で、オバマの力量が試される。
人民元の操作問題
人民元の相場は05年7月の制度改革で、事実上の固定相場から1日当たり一定範囲(現在は上下0.5%)で変動を認める「管理変動相場制」に移行した。その後人民銀行は市場介入を調節しながら元相場を切り上げ方向で誘導。05年7月21日の切り上げ以降の人民元の上昇率は19%となった。しかし、輸出が落ち込んだ08年7月以降は元相場の上昇を1ドル=6.83元前後で止めている。
中国政府は厳しく為替を管理していて、原則、輸出等の経常取引に伴う外貨取引しか認めていない。しかし、そうした規制を縫って、投機目的の多額の資金が中国国内に流入。人民元に対して上昇圧力となっている。このため人民銀行が元売りドル買いをしていると言われている。そうなると、国内に流通する人民元が増え、インフレ、さらなる資産バブルにつながりかねない。対外的には、ここに来て一転輸出立国を目指す米国との軋轢が生じる。
オバマ米国出国前のインタビュー
オバマ米大統領は、アジア歴訪を控えた9日、ロイターとのインタビューに応じて次のように発言している。オバマ大統領は、「中国は多額の米ドル(資産)を保有しており、米国の成功は中国にとり重要だ。別の見方をすれば、われわれがこれらの問題をある程度解決しなければ、経済と政治の両面において両国関係に大きな緊張が生じる」と述べた。そして、両国間の貿易不均衡拡大、中国の大量な米国債保有により、過去数十年間に「深刻な不均衡」に陥ったと警告。来週の中国訪問で、中国当局者との協議で人民元問題を議題として提起することを計画していることを明らかにした。(ロイター2009年 11月 13日 14:35 JST)
微妙なかじ取りを求められるオバマ
米国としては微妙なかじ取りが求められる。中国との貿易不均衡を正すためには、為替操作国と認定したいところだが、中国は米国に対する主要な債権国でもあり、中国の反発を招けば今後の国債増発による景気対策が大きな支障をきたす。インタビューでも、同大統領は、この問題については「米大統領として、一つの問題だけでなく、あらゆる問題に目を向けることが大切だと考えている」として明言を避けている。
しかし、傍から見て、ゲームを支配しているのは米国ではなく、中国。確かに米国は、9月に中国製タイヤにセイフティーガードを発動。中国に圧力を加えたが、中国タイヤの輸出額はたかが知れている。セイフティガードの対象にタイヤを選んだこと自体、米国のチキンぶりが表れている。それに余り乱発すると、米国の方が保護主義国との評価がなされ、却って身動きが取れなくなる可能性がある。かといって、為替操作国のカードは、米国債の最大のお得意さん相手には切れない。とすると、米国には切れるカードがほとんどないのだ。
かえって、中国の方が、米国に対して、債権者として、物言いができる。米国債の増発は米ドルの低落、自国の外貨資産を目減りさせる、と押し込められては、米国は反論ができない。