日本 FTAで大きく出遅れ

日本FTAで大きく出遅れ

 WTOは多国間協定だが、FTA=自由貿易協定は二国間協定だ。WTOドーハラウンドは遅々として進まないが、FTAは各国とも締結が進んでおり、日本はこれに大きく出遅れている。ちなみに、各国のFTA発効国向け輸出比率は次の通りとなっている。

  • メキシコ 93.5%
  • フランス 72.9%
  • ドイツ  72.7%
  • 米国   41.5%
  • 中国   24.1%
  • 日本   16.4%
  • 韓国   10.3%
韓国の急追

 日本は韓国を上回っているが、09年7月13日、韓国とEUとの間でFTA交渉が妥結された。韓国政府によると、今後協定文などの詳細を詰め、議会承認などを経て来年前半にも協定発効をめざすという。もしこれが発効するとなると、韓国は上記比率が25%を超し、日本は大きく引き離されることになる。
 韓国はFTA交渉を精力的に進めており、06年6月米国ともFTA交渉を開始し、その後8回の交渉を経て07年4月に合意し、同年6月に署名を行った。米韓FTAは包括的で完成度の高いFTAであると言われ、工業品の関税を撤廃し、農産物についても、関税撤廃の例外にしたのは米、乳製品、大豆、はちみつ、ばれいしょ、オレンジなどごく一部の品目に限られ、しかも米以外の品目については無税枠を設けている。しかし、米国の大統領交代、経済危機のなかで米国のFTA政策は変化しており、米韓FTAは合意後2年が経過したにもかかわらず未だに批准されていない。ただ、日本はEU、米国ともに政府間でFTA交渉がまったく行われていない。韓国EUFTAは、交渉は07年5月に開始され、2年半かかってようやく発効しようとしている。日本がこれから交渉を始めるにしても、周回遅れに近い状態だ。

民主党政権の農業政策

 民主党マニフェストで「米国との間で自由貿易協定(FTA)を締結」すると明記。選挙中、農業関係者の反発を呼び、各党から批判を受けるなどした。農水省の試算によると、経済連携協定(EPA)やFTAで関税などの国境措置が撤廃された場合、日本の農業総生産額の42%に相当する3兆5959億円が失われ、食料自給率が12%に低下するとのことだ。例によって、役所の数字だから言葉半分に聞くべきだろうが、米国とのFTAが、日本の農業に大打撃を与えることは必至だ。
 民主党は、当初のマニフェストの「米国とFTA締結」という表現を「FTA交渉促進」に修正。また「国内農業・農村の振興などを損なうことは行わない」という文を追加した。世界最大の農産物輸出国の米国とのFTAが、農産物抜きの内容で妥結できるはずがない。民主党の農業政策の本質が問われてくる。