G20金融サミット閉幕

ピッツバーグで開かれていたG20第3回金融サミットは現地25日、首脳宣言を採択して閉幕した。
要点は次の通り。

  1. 米国の過剰消費に依存してきた世界経済の不均衡を是正し、成長を促進するため、各国が政策を相互に検証し合う枠組みの創設。すなわち米国は貯蓄率向上、財政赤字の削減を行い、日中等は外需依存体質を改めることを目指すことになるが、この枠組みは、各国が政策の進ちょく状況をG20などへ報告し、金融サミットで分析するもので、相互検証により、宣言の実効性を高めようというものだ。子育て手当等の内需重視の民主党政権の政策もこれに合致することになる。
  2. 世界の持続的成長に向けて、各国が財政出動や金融緩和を中心とした景気刺激策を継続することを確認。ところで、積極財政反対論者は、マンデル・フレミング・モデルなる経済モデルを持ち出し、為替相場が変動相場制に移行した73年以降、財政政策の有効性は減少している、と主張していた。すなわち、変動相場制に基づく開放経済では、財政出動は、金利を上昇させて民間設備投資を抑制し、金利上昇が円高を生み、輸出を減少させてしまうので、結果として財政拡大はGDPを抑制してしまう。しかし、こうしたマイナス効果は一国だけで行うから生じるのである、世界各国が一斉に財政出動をやれば、そうならならない。出口戦略=いつ財政出動を緩め、金融を引き締めるかについての議論も同じだ。フライングを許さず、一斉のせいでやりましょうとのことだ
  3. 金融サミットを定例化。10年6月にカナダ、同11月に韓国、11年にはフランスで開催する。
  4. 金融機関の高額報酬問題について、強力な国際的な報酬基準の設定で各国が協調することを表明した。複数年にわたる報酬の保証の停止や、公的資金が注入されている金融機関での高額報酬の制限などを即時実施するよう、金融機関に求めた。
  5. このほか、景気回復を前提条件として、銀行の自己資本規制の強化を12年末から実施すると明記した。この規制強化では、自己資本の質と量の双方の充実が求められる。量の面では、現行の銀行の国際基準の自己資本比率8%をさらに引き上げること、質の面では普通株の比率についても基準を設けようというものだ。日本の銀行は優先株が多いため、今後増資等による資本の充実が求められることになる。
  6. 政策監視を含むIMFの機能強化と新興国の発言権の引き上げ。IMFでの発言権の強弱は、IMFへの出資額で決まってくる。先進国から新興国に5%程度を移そうということになっている(現在新興国、途上国の出資割合は39.5%)。鳩山さんは、新興国だけでなく、日本の出資額6%も低すぎると文句を言ったが、これはよくぞ言ってくれましたである。これまでは米国に遠慮して、こういうことは言えなかった。ただIMFは一定の重要事項を決議するには、85%以上の賛成が必要となっているが、米国が15%以上出資を割り当てられているため、米国一国が反対すると重要事項が決まらない。この現状を変更するのかどうかが今後の問題だ。