中国の低炭素化政策のねらい
原油の輸入依存率高まる
中国はかつては原油の輸出国であったが、経済発展に伴い、国産原油では足りなくなり、93年を境に輸入国に転じた。08年の石油消費量は3億8900万トン、2億トンを海外からの輸入に頼らざるを得なくなっている。このまま原油消費量が増えて行けば、輸入も追いつかなくなる。原油輸入量の限界が中国経済成長の限界でもある。
中国の首脳が毎年のように、アフリカを尋ね資源外交を重ねているのは、こうした背景があるからだ。
中国の生き残り策は省エネ
中国による原油の買いあさりが続くと、原油の価格が高騰して、他国も不利益を被ることになる。となれば、中国には省エネを進めてもらうほかない。中国も、自国経済発展のため省エネに努めている。97年11月に、節約能源法(省エネ法)が公布されているが、改正法が08年4月1日から施行される。同法は、省エネ管理・方法・奨励措置・法的責任について詳細に規定している。
中国は、これまで強制的な省エネ規制はせず、任意の認証制度をCQC(中国品質認証センター)が実施していた。ただ、政府調達品などは、省エネ認証マークを要求しているケースもあった。主な認証製品は、カラーTV、蛍光灯類、電源(ACアダプター)、パソコン、パソコン用ディスプレイ、モーター、ポンプなどである。
しかし、今後規制が強制化されることになった。政府は10年まで、30種類の製品について規格を強制することを目指しており、今年3月1日からパソコン用モニターとコピー機器など市場に流通させるときは規制に合格した標識を付けることが強制されることになっている。(保護主義的に利用されなければいいが)
中国が低炭素化に熱心な理由
中国は最近、低炭素化をやたら言うようになった。これにはある狙いがある。97年11月のCOP3で採択された京都議定書では中国は非付属書1国として二酸化炭素の削減義務が課されず、京都議定書で導入された柔軟性措置であるクリーン開発メカニズム(以下CDM)の対象国と位置づけされている。それにより中国政府は先進国からの更なる投資拡大の手段としてCDMスキームの活用に期待を寄せ、いち早くCDMの承認体制を整え、CDM管理弁法を整備し、先進国各国との活発な政府間協力を行ないつつ、積極的に国内でのCDM案件を増すべく最大限努力している。
要するに中国政府は気候変動問題を単にCDM事業実施のチャンスととらえる傾向が強く、CDM事業により得られた炭素クレジットを国の「資源」として定義付け、CDMの意義については地球温暖化防止に資するという本来の趣旨から逸脱した、CDMがもたらす新たなビジネスチャンスおよび金銭的な利益という点を特に強調している。そのような観点から、中国政府は二酸化炭素という新たな「国家資源」を割安な価格で易々と先進国に移転するのが好ましくないと考え、事業内容によって課金率が異なる費用徴収の制度を設けるとともに、クレジットの移転価格の「妥当性」を厳しくチェックする価格統制を行っている。http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/985/985-01.pdf
CDM取引の実例
中国のCDM取引の実例がネットにあったので紹介する。
「1000年発展目標実現のための中国クリーン発展メカニズム(CDM)開発協力プロジェクト湖北訓練会」によると、湖北省の企業15社の19プロジェクトが国の認可を経て、今後5年間で2000万トンを超える二酸化炭素排出権が国際取引されることとなった。取引額は16億元に及ぶ。
「湖北日報」の報道によると、今回のプロジェクトに参加する15企業は武鋼、宜昌長豊水電開発有限公司、五峰南河水電開発有限公司など。プロジェクトは省エネ・汚染物質排出削減や再生可能エネルギーの開発、エネルギーの代替などの分野に及ぶ。このうち、武鋼の四つのプロジェクトでは、年間250万トン余りの二酸化炭素排出権がイタリアの電力会社に購入されることとなった。年間取引額は2億元。
湖北省科技信息研究院副院長の黎苑楚氏は、次のように指摘している。「先進国が自国内で二酸化炭素を1トン削減するには、100ドル以上のコストが必要となる。しかし、発展途上国から排出権を購入すると、コストは1トンあたり10ドル前後で済む。CDMは先進国・発展途上国双方が利益を得ることができるシステムだ。湖北企業は、先進国とCDMプロジェクトを進めることで、資金と、クリーンで高効率なエネルギー利用技術を得、環境保護を実現することができる。」
http://www.chinapress.jp/economy/3443/