レナウン アクアスキュータムブランドをついに売却

レナウンの決断

 レナウンは9月8日連結子会社アクアスキュータム社の全株式と商標権を英社に売却した。ア社は元々英国の会社。水を意味する「アクア」と盾を意味する「スキュータム」を組み合わせた社名から分かる通り、防水仕様のコートが主力商品となっている。クリミア戦争時にイギリス軍が将校用のコートにこの防水布で作ったコートを採用したことから知名度が飛躍的に上がった。
 こうしたア社の代表製品がトレンチコート。トレンチとは塹壕の意味で、屋根のない塹壕で軍服が雨に濡れないようにするためのコートがその名称の元になっている。

アクアスキュータムの買収

 レナウンアクアスキュータムを買収したのは90年、バブル景気がちょうどはじけた頃だ。
 80年代初め、プレップスタイルというのが流行りで、チノパン、トレーナー、デッキシューズというのが基本アイテムだった時代、アクアスキュータムはあこがれのブランドだった。その頃はトレンチコートよりステンカラーコートが人気で、チノパン、カーディガンの上に羽織るのが当時のお洒落だった。当時のポパイ、ホットドッグエクスプレスといった若者向けファッション誌も、こうしたブームに乗っかっていた(自分もだが)。
 しかしレナウンアクアスキュータムブランドを買ったのは、90年。ブームも下火になっていた頃だったのではないか。

同ブランド復活という無駄な努力

 レナウンは、同ブランドの人気を回復するためのマーケッティング費用を、ファンドからの投資で賄ったが、これが大いにこけた。結局これに投資したファンドも、撤退を余儀なくされ、このファンドからレナウン株を買ったのが、ネオライン系のSPICAという投資ファンドだ。この投資ファンドが、役員に自分らの推す木村剛、藤沢信義らを選任するよう求めた(http://www.data-max.co.jp/2009/04/1_135.html)。結局藤沢信義が取締役の一人に選任されている。

いかにも日本的な

 レナウンが、ファンドからの出資を受けてまで、アクアスキュータムブランドのブランド価値を高めようとしたのはなぜか。死んだ子を生き返らせようというだけの無駄な努力をなんでレナウンはしたのであろう。おそらくは非常に日本的な理由があったのではないか。
 ●●さんの肝いりで買ったアクアスキュータムブランドを無駄にする訳には行かない。何とか新たな息を吹き込んで、新しいブランド価値を創造しよう、、、なんて、社内ヨイショ的な発想でやったとしか考えられない。そんなことをするくらいだと同じ金で新たなブランド開発をすればよかったのだ。おそらく、若手、中堅社員はあきれていたのではないか。
 これはある種、日本の伝統ではないか。かつて太平洋戦争で、旧陸軍が実行した世紀の愚策「インパール作戦」を思い出す。これは牟田口廉也という、東条英機の腹心と言うだけのバカ将軍が建てた作戦で、ビルマからインドに、2000m級の山岳地帯を食料となる牛馬を連れて縦断するという無茶苦茶なものだった。彼は「牛馬は運搬の手段ともなり、食糧にもなる。一石二鳥の画期的な作戦だ」として「ジンギスカン作戦」と自分で名付け悦に入っていた。しかし、牛馬は結局足手まといになっただけで、次々に崖下に大事な食料と一緒に転落、百害あって一利もなかった。大本営にも無謀を指摘する声が大きかったが、結局最後は「牟田口があれだけやらせてくれと言うんだ。これで認めなかったら牟田口の男が立たないだろう」ということでGOサインが出てしまった。レナウンアクアスキュータムブランドを生かそうとしたのも、「●●さんを男にしよう。」と言ったくだらないヨイショが生んだ現代のインパール作戦だったのではないか。これは推測なので、違うという情報があったらコメントください。