人民元の国際化はあるのか

中国政府の動き

 中国政府は人民元の国際化に向けた作業部会を設置し、中国人民銀行をはじめ財政、商務当局などが参加し、王岐山副首相が責任者になっている。人民元の国際化に向けた動きがその後実際に活発化している。
 09年7月に元建貿易決済を、一部解禁したが、その後一部外資にも解禁した。9月8日には香港で元建て国債を発行すると発表した。
 人民元が国際化するには、海外の人や企業が人民元を運用する方法が用意されていなければならない。海外で人民元は使いようがないから、寝かさないためには運用先を見つける必要がある。元建て国債が継続的に発行されれば、人民元は、海外の人・企業にとって、保有していても意味がある金に変わってくる。

人民元の国際化のデメリット

 中国政府は、人民元による貿易決済を認めはしたが、中国政府の許可が必要だったりと、人民元の使い勝手はまだまだ悪い。これは中国政府の努力不足ではなく、意図してのことだろう。現在は人民元は完全に政府のコントロール下に置かれているため、人民元の相場を市場が決めることはできない。人民元の為替レートは、通貨バスケットを参考にして、人民銀行の外貨管理局が決めている。そのため米国は、中国政府が人民元を元安に為替操作し、輸出を後押ししていると批判する。
 人民銀行が人民元決済を自由化すれば、こんな為替操作もできなくなる。中国はまだまだ外需依存経済である。GDPへの内需の寄与度は日米が60〜70%なのに対して、外需頼みだった中国は40%前後しかない。人民元が高騰すれば、輸出産業は大打撃を受け、外需に頼る中国経済は破たんする。
 中国政府は内需転換策が進まない限り、人民元の国際化を真剣には考えないだろう。

元建て国債発行

 09年9月28日、香港で人民元建て国債の購入申込の受付が始まった。中国本土以外で元建て国債が発行されるのは初めてだ。国債は2年物、3年物、5年物の3種類で、発行総額は60億元(約780億円)。このうち個人投資家が購入できるのは2年物と、3年物で、それぞれ表面利率は年2.25%と2.7%。機関投資家向けの「5年物」は同3.3%。中国国内の利率より利率が高い。
 香港政府は人民元建て国債の発行が香港域内の金融業支援につながるとみている。また中央政府人民元の国際化を目指しており、貿易の分野では7月から香港と本土側の上海市広東省の一部都市で人民元建て決済の試行を開始している。ただ、人民元を外貨として抱えているだけで、運用できなければ死に金になってしまう。人民元を使った投資ができれば、だったら人民元で代金を払ってもらっても良い、ということになる。(09.10.18)

人民元決済を外資に解禁

 中国人民銀行は、9月、中国系銀行に限定していた人民元の国際貿易決済業務を、外資にも解禁した。もっとも外資に決済を依頼できる企業は400社の中国系企業と、香港、マカオASEAN諸国の企業との間の貿易取引に限られている。解禁と言っても、当局のコントロールの及ぶ範囲での解禁となる。
 元建て決済を認められた邦銀は、三菱東京UFJ三井住友銀行みずほコーポレート銀行なども決済業務の認可を申請済みだ。

米国の反感

 米財務省は10月15日に為替政策に関する報告を大統領に提出。報告書は、中国を為替操作国として認定することは見送ったが、人民元の過小評価を実例や数字をあげて詳述し、中国当局が元売り外貨買い等により外貨準備高を今年前半だけで1860億ドル積み上げていることも指摘、概して中国政府の為替政策に不満を示す内容となっている。米国は他国から借金をし、経済を回してきたが、財政赤字が積み重なる中、輸出推進政策に大きく舵を切っている。この場合に一番の障害となるのが人民元為替レートの意図的据え置きだ。