榊原英輔さん 国債増発を提言

榊原英資さんの提言

 自他ともに認める民主党シンパの榊原英資元財務官。現役財務官僚時代「ミスター円」とも呼ばれた人物だが、9日、日本記者クラブで講演し、日本経済は年末から来年初にかけて二番底を打つ可能性があるとし、国債を財源に、景気対策を早急に打つべきと提言した。
 具体的な景気対策として、エコ・ポイントやエコ減税などの継続、民主党が掲げる子ども手当や、高速道路料金の無料化、ガソリン税などの暫定税率廃止をあげ、早急な実施を求めた。

国債増発と長期金利

 国債を増発すれば、心配なのは長期金利の上昇だ。榊原さんは、「日本の個人金融資産は1400兆円もあるのだから、日本の財政状況は危機的とは言えない」「現在の国債市場は、10─15兆円の国債発行を十分に吸収できる。金利が若干上がっても、2%(現在1.3%台)を上回ることはない」と、長期金利上昇懸念を一蹴した。
 確かに、景気対策で重要なのはスピードだ。麻生政権の景気対策は、内容に対する評価を別にして、スピードという点では申し分なかった。

財政出動は全世界で一斉に

 G20が、各国が一致団結して景気対策を行おう、出口戦略はまだまだだと言っているのは理由がある。
 積極財政反対論者は、マンデル・フレミング・モデルなる経済モデルを持ち出し、為替相場が変動相場制に移行した73年以降、財政政策の有効性は減少している、と主張していた。すなわち、変動相場制に基づく開放経済では、財政出動は、金利を上昇させて民間設備投資を抑制し、金利上昇が円高を生み、輸出を減少させてしまうので、結果として財政拡大はGDPを抑制してしまう。しかし、こうしたマイナス効果は一国だけで行うから生じるのである、世界各国が一斉に財政出動をやれば、そうならならない。出口戦略=いつ財政出動を緩め、金融を引き締めるかについての議論も同じだ。フライングを許さず、一斉のせいでやりましょうとのことだ
 例えて言えばこういうことだ。クラスの大部分がインフルエンザにかかってしまった、だけど自分だけ学校を休んだら、勉強が遅れてしまう。そうしたときは、みんな学校を休めばいいじゃないか。そうすれば心配することなく休養に専念できるだろう。

郵政民営化の凍結も重要

 郵政民営化の本質は何か。要は、郵便局の運用手段が国債しかないことへの批判だった。郵便局が民営化すれば、株主たちが「そんな年1コンマ何%の国債なんか買っていないで、もっと利回りのいい投資をしろ。」という。当然「日本国債より米国債のほうが利率も高い。」「リスク資産と安全資産のいずれかに偏るのは問題だ。資金運用も対象を広げよう」なんてことになっただろう。外国の機関投資家が入ってきて「日本国債なんか買うな」ということになる。
 しかし、まだ幸い郵政は民営化されていない(株式会社にはなっているが、株は全部国が持っている)。今郵政が民営化されたら、増発が予想される国債を誰が買い支えるのか。今は銀行が貸す相手がなくて、仕方なく国債を買ってくれているが、長続きする話でもない(長続きされても困る)。長期金利の過度の上昇は経済の全てを破壊する。郵政は民営化していはいけないのである。
 もし民営化していてたら、日本のゆうちょ銀行、かんぽ生命の運用資産は米ドルの下落、株価の下落で大損害をこうむっていただろう。