G20 銀行の自己資本規制強化の方向

G20財務省中央銀行総裁会議

 ロンドンで今月9月4、5日に開かれたG20財務相中央銀行総裁会議では、国際的に活動する主要銀行の自己資本規制を強化する方針で一致した。銀行は損失に備え、より多くの資本を持つべきだとの方向で、基本的な合意を見た。声明では、銀行は「回復が確実になった際には、自己資本の量と質の向上が求められる」としている。要するに、現在のような危急時には自己資本比率は8%以上あればいいが、景気が回復すれば、それ以上の自己資本比率に引き上げようというのである。(もう一つの議論の中心が、銀行役員等の報酬規制だが、その議論はしばらく措く)
 アナリストは、シティグループやバンカメなど、政府の救済を受けた旧式の大銀行にとっては、政府による厳しい監視の下、部門の解体やスピンオフを余儀なくさせる可能性がある、と指摘する。
(以上9日ロイター)
 また日経は、G20が国際活動をする銀行に「自己資本の量と質の向上」を求めることで合意したという。量は自己資本比率8%のことを言っている。不況期はともかく、好況期にはさらに積み増して、8%を超える数字に上げさせようというのだ。問題なのは質の向上だ。というのも各国の金融監督当局は「狭義(コア)の中核的自己資本比率」という新基準を取り入れようとしているが、このコアTierが何を指すかが問題だ。「普通株」に限定される方向で話がまとまりそうだが、日本としては優先株も加えてほしい。

日本のメガバンクは大反対

 心配なのは日本の銀行だ。欧米の銀行は、公的資本の注入で、自己資本は厚くなっている。これに比べ自力で増資等で自己資本を増やしてきた日本のメガバンクは、自己資本の厚さでは出遅れてしまっている。日本は「筋肉増強剤を打った選手とそうでない選手を同じレースで競わせるのはフェアではない」と主張しているが、欧米の理屈は違う。「筋肉増強剤ではなく、正当なエネルギー補給だ。別に日本の銀行にも公的資金を注入すれがいいじゃないか。銀行は政府の影響下に置かれるのは嫌だろうし、政府が株主として加わることで株主も自分の株の価値も相対的に下がるから嫌だろう。だけど、銀行と経済とどちらが大切なんだ」と言うことになる。
 数は力、力は正義だ。日本がいくら文句を言おうと、多勢に無勢。その反対は負け犬の遠吠えに過ぎない。
 例えば、IFRS。これは、国際会計基準審議会(IASB、旧国際会計基準委員会・IASC)が、会計の国際基準として作成中のものだが、IFRS(IASの発展形)は、元々、米国会計基準が国際基準になるのを防ごうとして、欧州がIASを作り、ここで欧州型会計基準を作ろうということになったのが、その始まりである。要は、国際間のパワーゲームの産物なのである。BIS基準も同じだ、理屈で戦っているように見えるが、実際は、加盟各国が、できるだけ自国に有利な基準を作りたいということで、その妥協として作られる。欧米が手を握ってこの線で行こうということになったら、日本の出る幕はない。

普通株の増強

 さらに心配なのは米英の動向だ。米英は自己資本の中でも普通株という中核的自己資本を厚くすべきだと主張している。米国がこういうふうに主張するのは、米銀は普通株が資産に占める割合が大きいからだ。もはや正義や理屈は関係ない。