バーナンキ再任 サマーズはガッカリ

バーナンキ

 オバマ米大統領が25日、FRBバーナンキ議長を再任する方針を発表。議会の承認が得られれば、任期が切れる2010年1月末以降、さらに4年間続投することになる。
 バーナンキについての批判は、リーマンを救わなかったことだ。リーマンショック金融危機を招来した。批判する人間は、ベアスターンズも、AIGも救ったのに、なぜリーマンだけ救わなかったのか、という。
 ただ、その後の火消し役は見事だった。事実上のゼロ金利に誘導、市場からリスク資産を買い取り、資金供給を増やし、さらには国債も買い入れ、政府の財政不安も救う結果となった。
 厳しい言い方をすれば、自分で火を点けて、自分で火を消しただけではないかとも言える。

ガッカリしているのはサマーズ

 ガッカリしているのはサマーズだろう。サマーズは、オバマの死命で国家経済会議=NECの委員長職にある。同職務は大統領の経済顧問のような位置づけであり、経済に対する直接の影響力はない。ただかつて、ルービンがNEC委員長からFRB議長に移ったように、将来のFRB議長含みでの就任ととらえ方が一般的だった。というより、サマーズほどの野心家が、次期FRB議長という含みがなければ、NECの委員長には就任しないだろうという見方が強かったのではないか。
 しかし、バーナンキが、期待以上の頑張りを見せたため、結局議長席はお預けになってしまった。

オバマの狙い

 ただサマーズにはまだチャンスが残っている。今後、米国金融界がさらなる破たんを起こしかねないからだ。FRBは米銀大手19行にストレステストを行い、5月7日安全宣言をしたが、リスク資産についても時価評価を不要にしており、実にいい加減なものであった。
http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20090523/1243088000
 現在、CMBS(商業不動産担保証券)が、次の爆弾と見られている。商業不動産は、住宅ローンと異なり、5年とか短期の借入資金で購入し、価格が上がればともかく、下がった場合借換が難しくなり、そこで投げ売り、暴落ということになりかねない。また昨今の不景気で、商業不動産市場は冷え込んでいる。
※追記:トウモロコシ価格の下落、エタノール燃料の需要減退、食肉消費の手控え等が理由となって、米農地価格が前年比3%のマイナスで、22年ぶりに下落した。穀倉地帯の米中西部の農地価格は1−3月期は6%下落。4−6月期も引き続き下落傾向にある。農地価格の下落は大型農機の購入等に悪影響を及ぼすが、穀物価格の下落と重なったことで、農業関連融資の焦げ付きも考えられる(8月22日付日経から)。
 また、あれほど鳴物入りで登場した官民投資プログラムも一向に進んでいない。となれば、銀行の不良資産は銀行のバランスシートに残ったままだ。
 この爆弾はいつか爆発する。そうなった場合、バーナンキが辞めて、サマーズが新議長になるかもしれない。火中の栗はバーナンキに拾わせた方が良い。オバマとサマーズがそう考えていたとしても不思議はない。

追記

 米国GDPの7割を占める個人消費も冷え込んだままだ。バーグドルフ・グッドマンというNYでも最高峰ともいうべき百貨店でもブランド品を7−8割引きセールスを行っている。あるクレジット会社では、今年に入ってからの新規発行数が前年同期比の6割程度に減ったという。(09.8.22日経)借金で高額商品を買おうという客が激減しているのだ。
 「大学へは家から通う」という大学生が09年には58%もおり、2年間で9ポイント上昇した。ある主力外食チェーンも客数が前年比で2.6%減っている(09.8.22日経)。08年後半以降、高騰したガソリン価格が落ち着いた後も、消費者の自動車離れ、公共交通機関を利用する傾向は強まっている。公共交通機関の利用者数は56年以来最多となっている(http://www.jetro.org.au/world/n_america/us/biznews/49ed473e9c7e8?print=1)。米国人の生活様式、消費スタイル自体が劇的に変化しつつあるのかもしれない。
 個人消費は、景気対策もあって09年1-3月期は前年期比プラスだったが、7月も小売売上高が前月比0.1%減と3カ月ぶりに減少した。
 同日経記事は、家計に3つの重荷があると指摘する。雇用悪化、住宅問題、過剰負債の三つだ。雇用悪化は言うまでもなかろう。住宅問題では、住宅価格の下落と、住宅ローン金利が上昇し低利ローンへの借り換えも進まず、住宅ローンの差押え件数は過去最悪の水準。家計の負債残高は減っている。しかし、これは逆に考えれば、個人が、家計収入を消費より、借金の返済の方を優先していると見ることができる。下記絵の負債残高が減ったとは言っても、00年末の約2倍の規模で高止まりしている。