アメリカン・ギャングスターとブランド

 以下は日経09年7月27日付の中島茂弁護士のエッセイからの受け売りである。
 アメリカンギャングスターというハリウッド映画があるそうだ。ある小さな縄張りを引き継いだマフィアが主人公。彼は、町中のジャンキーが「最近のヤクは質が悪くて」とこぼすのを聞き、「だったら俺が最高のヤクを提供してやろうじゃないか」と一念発起する。みずから東南アジアまで足を運び(最近はアフガンみたいだけど)高純度のヘロインを手に入れ、そのヘロインを「ブルーマジック」と名付けた。品物がいいため、売れに売れる。しかし、そうなると必ずコピー商品が現れるのが常である。しかもこのコピー商品、不純物を含んでいるため、本家本元のブルーマジックの評判までが落ちてしまう。
 この主人公、コピー商品の製造元に乗り込み、こう言い放つ。「ブルーマジックはブランドだ」「買い手が俺を知らなくても、みんなはこいつを知っている」「お前がおれのヤクの純度を落とすなら、それはブルーマジックとは呼べない。ブランドの侵害だ」
 先述の中島弁護士は、この主人公の言葉はまさにブランド=商標の品質保証機能を表しているという。同感だ。商標は、製造者とは別個独立の価値を持っている。製造者を知らなくても、その商標自体がその商品の品質を表している。商標を保護することによって、製造者の事業も守られることになる。
 商標法第1条には、「この法律は、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」とある。さきのマフィアの言葉はこの商標の本質を言い当てている。さすがアメリカ。マフィアもブランド・ビジネスの本質を理解している。