REITに2つの追い風

REITに2つの追い風

 REITに2つの追い風が吹いている。90%ルールの改定と、官民ファンドの設立だ。

「配当可能所得」から「配当可能利益」へ

 90%ルールとは、投資法人は●の90%を投資主(会社で言えば株主)に分配(配当のことです)すれば、その分配した金額には法人税が課税されないというルールだ。この●に入る文言が、従前は税務上の「配当可能所得」だったのが、平成21年改正で企業会計上の「配当可能利益」に変わった。
「負ののれん」は配当可能所得には計上されるが、配当可能利益には計上されない。減損損失は配当可能所得には計上されないが、配当可能利益には計上される。配当可能利益の90%を配当すれば法人税を免れることは、REIT業界にとって大歓迎なのである。

負ののれん

負ののれんとは、事業譲渡や合併により得られた差損、差益のことである。例えば、純資産5億円の会社を7億円で買ったら、B/Sの資産の現金が7億円減って、資産が5億円増えてしまうので、それとのバランスで資産に「のれん2億円」を計上する。それとは逆に純資産5億円の会社を3億円で買ったら、B/Sの資産の現金が3億円減って、資産が5億円増えてしまうので、それとのバランスで負債に「のれん2億円」を計上する。
 負ののれんというのは、差益が得られて利益ではあるのだが、その分キャッシュが増えるわけではない。この分も90%配当しなければならないとなると、キャッシュが不足する。しかし、現在資金力のあるREITと資金力のないREITがあって、後者が破たんした場合、前者がこれを吸収合併しようとなると、5億の資産を3億円で買うような形になる=負ののれんが発生する。90%配当要件を満たすことができないから諦めようということも出てくる。それだとREITの統廃合が進んでいかない。負ののれんを控除できることになれば、統廃合も進むことになる。

減損損失

 ニューシティ・レジデンス投資法人(NCR)は破綻した翌日の08年10月10日に前期の業績予想を修正し、投資家への分配金を行わないことを公表した。9月末の物件売却損失の12億円と、10月末取得予定であった不動産売買の違約金の55億円の二点を特別損失=損失引当金として前期に計上しなければならなかったからである。発生時期はともに当期の09年2月期だが、NCRは破綻したため監査法人との協議の上、前記の08年8月期に減損損失計上することにした。そのためここで大きな問題が発生した。
従って配当可能所得は18億円である一方で(税務上はこうなる)、配当可能利益は49億円(18億円−12億円−55億円)の損失が発生した状態になっている。NCRが法人税課税を回避するためには、配当可能所得である18億円をベースとして少なくとも16億円超(90%)を投資家に配当する必要があるのだ。しかしそれを行うと、債権者への支払原資が用意できない。そのため、NCRは、破綻により債権者への支払原資を確保するため投資家への配当を行わなかった。結果として法人税等を9億円支払うことになったのである。
 この場合、法人税9億円を支払わせることは妥当ではなかろう。そのため、こうした改正があったのである。

導管体要件

 導管体とは、実質的には運用資産の集合体に過ぎない会社組織のこと。税法上、REITが導管体であると認められれば、REITから出資者への分配金については損金参入することができる。法人利益と投資家の所得に二重課税されることを防ぐ趣旨であるが、法人段階で課税されない分、出資者への分配金が増えることが、リートの金融商品としての魅力となっている。導管体と判定されるには次の要件が備わっている必要がある。

  • 事業年度の終了時において発行済の投資口数が50人以上の者に所有されること
  • 発行した投資口の発行総額に占める国内募集の割合が50%超であること
  • 営業年度が1年を超えないこと(6ヶ月のREITが多い)
  • 資産運用を投資委託業者に委託していること
  • 配当等の額が配当可能利益の90%超であること
  • 事業年度の終了時において同族会社に該当しないこと
  • 適格機関投資家以外から借入を行わないこと
  • 他の法人の株式の50%以上を原則として所有しないこと

(措置法67の15)
官民ファンドの件は日を改めて、、、