増築工事で構造計算が不要に 

木造建築の増築で構造計算が不要に

 建築基準法の現行規定では、木造建築物を増築する際には、増築部分がわずかでも既存部分を含めた建物全体の構造計算が必要だった。9月1日から、この構造計算が不要になる。

告示で決められていた

 日経記事によると、国交省建築基準法関連の告示の改正で済むらしい。構造計算をするとなると、構造計算も行う専門の設計事務所に頼まなければならず、10万円ほどの費用がかかる。全国で増築件数が膨大なことを考えると、国民経済全体で見ればこれはかなりの負担だ。こうしたことが、国会の決議を要する法律ではなく、所轄大臣のハンコ一つで決まる告示で取り扱われているところに、疑問を感じる。

結論的には賛成

 今回の告示の改正には結論的には賛成だ。木造建築は新築の場合は、2階建て以下で、延べ床面積が500平米以下であれば、構造計算は不要になる。なのに増築は、1平米でも構造計算が必要になるというのは、明らかに均衡を欠いている。ただ、「結論的に賛成」というのは、そもそも木造建物の新築時に構造計算を不要とすることがいいことなのかという疑問があるからだ。

木造建築は無法地帯

 木造建築でも、耐震、耐風構造が要求される。中程度の地震で建物の構造に損害が出ない程度、大地震で建物内の生命に損害が出ない程度の構造耐力は必要で、この点は鉄筋だから、木造だからということで区別はない。ただ鉄筋、鉄骨建物は、構造計算もしないと建築確認が出ないが、一定の基準以下の木造建物は簡単な計算式で建築確認が下りてしまう。
 具体的には、建物を平面で見て、縦軸方向、横軸方向(X方向、Y方向)の合計で一定数量の耐力壁があるかどうかで決まる。もう少し具体的に言うと、●平米の建物なら、東西方向、南北方向に、合計●個の耐力壁がなければならないという決まりしかない。ここにいう耐力壁とは、筋交いの入った壁のこと。割り箸4本で四角を作ってほしい。そのままだと、縦、横からの力で簡単に歪んでしまうが、その対角線にもう1本割り箸を入れれば歪みにくくなる。これが耐力壁の仕組みだ。木造建築では、これを適正な数入れなければならないのだが、耐力壁の配置については一切審査基準がない。例えば耐力壁が10個必要な場合、南北方向に9個、東西方向に1個あればいい。しかしこうした建物は南北方向からの力には耐えられるが、東西方向の力には耐えられない。また、例えば極端な話、4辺のうち2辺に耐力壁が集中し、残りの2辺に全くないといった場合でも、建築確認は通ってしまう。では法律は、どういう方法で構造耐力を確保しようというのか。それは設計者(正確には設計監理者)の良心に期待していることでしかない。
 しかし、それでいいのだろうか。木造建築の設計をしているのは、構造計算には素人の2級建築士が関わっているだけだ。そのため、構造体力のない木造建築が横行しているのが現状なのだ。庶民にとって、家は一生の買い物。木造だから、500平米以下だからということで、構造計算を不要としてしまっていいのだろうか。

自衛手段

 どうやったら、欠陥木造建築を購入しないようにすむか。住宅性能表示制度の利用が一つ考えられる。詳しくは↓
http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20090821/1250827774