国内長期金利は上昇気味

10年国債利回り上昇傾向

 長期金利の指標となる新発10年国債利回りは1カ月ぶりに1.4%台となった。長期金利の上昇には、いい上昇と、悪い上昇がある。景気が良くなると物価も上がり、リスク資産の株価が上がると、逆に安全資産であり、インフレによって価値が低減する債券価格が下がる(=長期金利が上がる)というのが、いい金利上昇。現在は株価が上昇基調にあり、7月16日の新発5年債も株価上昇の中、応札倍率は3.31倍と前回の3.09倍を上回っている。ここからするといい金利上昇と言っていいだろう。

危機は去った

 長期金利は昨年末にかけ1.1%台まで低下。その後反転し、6月11日には1.56%を記録。このころはちょうど国債の増発も控えており、財政リスクを予見しての悪い金利上昇ではと見る向きもあり、さらなる金利上昇を予想した向きもあった。しかし、その後発行された国債の応札も好調で、長期金利は下がり気味だ。この原因を東洋経済誌は次のように解説する。
 現状、国債の供給圧力を需要面から吸収しているのは、中央銀行国債買い入れとともに、銀行など金融機関のカネ余り、資金運用難だ。その背後には、日本の膨大な貯蓄があり、経常黒字がある。政府が大赤字でも、民間の企業や個人が赤字を穴埋めしてくれる。その意味で国債は日本の借金であると同時に、日本の資産でもある。双子の赤字を抱える米国が連邦政府債務残高の48%(08年末)を外国資金に依存しているのに対し、日本国債は外国人保有率が8%(08年9月末)。ほぼ国内でファイナンスを完結している。
 要は日本政府という放蕩親父を、国民経済という息子が支えてやっているという構図だ。
 ただ、こういう風にも見える。金融業をやっている息子が金をよそに貸して金利を稼ぎたくても、優良企業は設備投資もしないため借りてくれないし、貸してくれと言ってくるところはリスクのある企業ばかり。金は余っているが使い道がない。ところが、例の信用できない親父が、今度ボーナスが出たらどーんと返すという。このままお金を寝かしておくのがもったいないから、低い金利でいいから貸すしかないかといったところだ。

ゆうちょ銀行はどうなるか

 民主が衆院選で勝ったら、政府が持っているゆうちょ株、かんぽ生命保険株は売りに出されることはなく、国が100%株主の地位にとどまっているだろう。ゆうちょ銀行、かんぽ生命が政府の管轄下にある以上、国債を積極的に買ってくれるだろう。
 こうした国債増発危機のことを考えると、ゆうちょが完全民主化されてなくて、本当に良かったと思う。
長期金利は理論上、「期待潜在成長率+期待インフレ率+リスクプレミアム」で決定される。この3つのどれが上がっても長期金利は上がる。