日本エスコン 事業再生ADR手続による再生なるか

日本エスコン事業再生ADRで再生目指す

 日本エスコンというマンション分譲業者が09年6月22日に事業再生ADR手続に入った。上場企業では初となり、上場を維持することが前提の手続となる(ADR手続申請は上場廃止基準に当たらない)。同社は3月末時点で、有利子負債残高は724億円、そのうち1 年以内に期限が到来する借入金残高は534億円。さらに、6月には無担保社債50億円、7月には転換社債型新株予約権付社債33億円の償還を控えており、これらの返済を行うための資金調達ができない見込みとなったためだ。

事業再生ADR手続とはどんな手続きか

 産業活力再生特別措置法所定の特定認証紛争解決手続、略して「事業再生ADR手続」というが、これはどんなものか。同手続きの根拠法は裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律。原則、取引金融機関のみが対象になり、一般債権者には期限通り支払うか、手続外での別途協議が必要となる。事業再生ADR手続は、08年11月に経産省より認定された事業再生実務家協会(JATP)が扱っている。日本エスコンは22日事業再生ADR手続利用についての申請をJATPに対して行い、同日受理された。同社は、同日付でJATPとの連名で、全取引金融機関に「一時停止の通知書(借入金元本返済の一時停止等)」を送付した。
 JATPは公正中立な立場から、資産負債内容を調査し、同社に指導、助言を行い、上場維持を前提として、借入金に関わる全お取引金融機関と弁済スケジュールの変更を含めた事業再生計画案の協議を行うというものだ。いわば、JATPが仲介となっての、私的整理手続きと言っていい。7月3日の第1 回債権者会議が開かれるが、それまでの間の運転資金としてメインバンクが約25億円を融資した(DIPファイナンス)。
 従来型の私的整理の欠点は、メーンバンクが再建計画を作成・調整することになるため、他行の合意を取り付けにくかった。こう言った場合、メインバンクは頭を下げる立場のため、自ら率先して債権放棄をしなければならず、二の足を踏ませることになった。また最近は協調融資が多くなり、そもそもメインバンク的存在がなく、調整の担い手がいない場合もある。ADRでは事業再生で実績のある弁護士や公認会計士が仲立ちするため、銀行団の合意を得やすい。

債権者集会は

 第1回債権者集会には、手続債権者たる金融機関20行が出席。事業再生ADR手続の手続実施者として、出水順弁護士、溝端浩人公認会計士が選任された。同会議で、全債権者の同意を得て、借入金元本返済の一時停止期間が9月28日まで延長された。
 メインバンクが既にした約25億円の融資と、さらに事業再生計画案の決議が行われる第3回債権者会議までに行われる予定の15億円の融資に関し、これに対する弁済を、他の手続対象債権者の債権より優先的に扱うことについても、他行の承認を受けた。
 最終的な再生計画が確定するには、9月28日開催予定の債権者会議にて、全金融機関の合意が必要となる。

社債債権者からの支払い猶予も必要

 なお事業再生ADR手続では社債権者は対象とされていない。このため事業再生ADR手続外で個別に支払猶予を依頼することになる。7月22日に、償還期限が来ている第1回、第2回社債についてそれぞれ債権者集会が開催され、9月28日までの支払猶予が承認された。同決議について、東京地裁において、決議の認可の申立がなされる、認可時に、その効力を生じることになる。

3年以内の黒字化

 同手続きは3年以内の黒字化を求めている。同社としては、保有不動産の売却を進めて行くが、不動産市況が不透明な中、計画の実行は予断を許さない。

事業再生ADRの先例

 事業再生ADRには次の先例がある。

  • アジア投資 有利子負債468億円 09年3月
  • コスモスイニ 同1878億円 09年4月
  • ラディアHD 同1037億円 09年6月

参考:帝国タイムズ09.7.25、日経09.7.17