和製水メジャーの実現性は

日本も新興国向け水市場に参入

 経済産業省はこのほど、和製水メジャーの創設を視野に水ビジネスの海外展開などを支援する「水ビジネス・国際インフラシステム推進室」を製造産業局内に設置した。室長には同省産業技術環境局京都メカニズム推進室長の三橋敏宏氏が就任した(模倣品対策・通商室長と併任)。2020年を目途に100兆円市場の世界水市場に本格参入、3年以内にその第1号の創設を目指すとしている。
 既に今年の1月、和製水メジャーを目指し、「海外水循環システム協議会」が発足。参加企業は、日立製作所のほか、荏原製作所鹿島建設神鋼環境ソリューション、住友電気工業、ダイセン・メンブレン・システムズ、千代田化工建設東芝東レ、酉島製作所 、日東電工日立プラントテクノロジー三菱商事、メタウォーターの13社。ほかに、三菱重工横河電機など14社が参加を予定している(いずれも1月16日現在)。

水メジャー

 「水メジャー」と呼ばれるグローバル企業がある。浄化施設、給水所などの建設から、工場や一般家庭への給水、料金の徴収、海水、排水の処理までの管理・運営を、国や自治体に代わって一括して取り仕切るのが水メジャーだ。こういったノウハウのない新興国がビジネスの対象だ。政府主導で経営基盤を強化したフランスのスエズヴェオリア、イギリスのテムズウオーターの3強はいまや世界の上下水道ビジネスの8割を占めている。
 日本では自治体が水道事業を担ったため、民間企業に事業運営のノウハウが蓄積されていない。これに引き換え、欧州では早くから上下水道の民営化が行われ、このような環境でノウハウを蓄えた企業が、水メジャーとなり世界に進出しているのである。
 産業競争力懇談会の推計では、05年に約60兆円だった水市場の規模が、25年には約100兆円に拡大する見込みだ。いくつかの新聞は、水産業が脚光を浴びるとの見込みから、フィルター技術にすぐれた日本企業は水産業で世界的優位に立つという論評をしたものもあったが、実は違う。25年の水産業を予測した場合、素材供給にかかわる市場規模だけだとたったの約1兆円、プラント建設まで含めた市場規模は約10兆円、運営や管理まで含めた市場規模が100兆円となっている。逆浸透(RO)膜は日本企業が世界シェアの6〜7割を押さえるが、それだけでは得られる利益はわずか。水処理プラント建設でも千代田化工建設日揮などが有数の技術を持つが、三流プレイヤーの扱いで、世界での入札はなかなかとれないでいる。
 水メジャーは、一度システムをつくれば毎年、安定した収益を得ることができ、景気に左右されないのが強みだ。

企業単体でも挑戦は始まっている。

 三菱商事は、97年にフィリピンの現地財閥やイギリス水道大手と組んで、「マニラ水道会社」の経営に参画。05年にはフィリピン証券市場で株式公開をしている。他の商社も、日本企業に声をかけ、海外進出を狙っている。日本も産業政策として、こうした将来の飯の種を育ててほしい。