欧州の銀行も貸渋

ECB=欧州中銀の非伝統的政策

 ECB(欧州中銀)理事会は、09年5月、3本立ての非伝統的措置を発表した。

  1. ユーロ圏の企業が発行したカバードボンドの買い入れ
  2. 銀行への資金供給では期間をこれまでの倍の最大12カ月に
  3. EUで長期融資を手がける欧州投資銀行(EIB)もECBから資金を調達できるようにした
1年物資金供給するも銀行は貸し渋り

 ECBは、上記2の決定に基づき、6月には4420億ユーロもの1年という短期資金をユーロ圏に供給した。要は銀行に、もっと企業に金を貸しだせという趣旨でのことだ。しかし笛吹けど踊らずで、市中銀行が企業に融資をしたがらない。いわゆる貸し渋りだ。ユーロ圏の製造業売上高は5月まで8か月連続で減少、各銀行とも融資の焦げ付きを恐れてのことだ。
 オーストリアやEU外のスイスの銀行は、中東欧諸国への貸付が多い。中東欧の各国の消費者は住宅ローンを外貨建てで借り、自国経済が好調なうちは自国通貨が高騰、資産価値も上がって、借金の負担が軽くなり助かっていた。しかし、自国通貨が下落、資産価格が下落すると、全てが逆回りとなり借金の負担が大きくなっていった。
 スウェーデンの銀行もバルト三国に対する融資が多いが、バルト三国も経済が破綻しひどい状況だ。特に「バルトの虎」と呼ばれたラトビアの落ち込みが激しい。
 そのため、これらの国の銀行は、貸倒引当金の積み立てに追われ、企業に貸し付けるどころの騒ぎではないのだ。

カバードボンドの効果

 カバードボンド(covered bond)とは欧州で発達した資産担保証券の一つ。銀行が発行して投資家に売却しても、銀行のバランスシートからオフバランス化されず、発行銀行が担保証券の原資産であるローン回収義務を負う。オンバランスとなるが資産の裏づけがあるため高格付けが得られる。600億ユーロという買い入れ規模は、ユーロ建てカバードボンドの発行残高の10%弱、08年の発行額は960億ユーロ。600億ユーロはかなり大きな規模だ。
 このカバードボンド、政府や地方自治体向けの債権を担保にしたものと、住宅ローンなどを担保したものが多い。ECB総裁は「量的緩和に乗り出したわけではない」と述べており、マネタイゼーション(公的債務の現金化)になりかねない政府債権を担保した証券は含めず、住宅ローンを担保にした債権のみの買い取りを目指している(注:と思うが、違うかもしれません)。
 7月24日のECBの発表では、ECBとユーロ圏各中銀が買い入れたカバードボンドが合計28億6100万ユーロとなったという。ECB理事会メンバーのノワイエ仏中銀総裁は22日、ECBのカバードボンド購入については「非常に満足している」とし、スプレッド(注:さっきの中とも絡みますが、住宅ローンの長期金利に対する上乗せの方だと理解しています)が大幅に低下し、発行量も増えていると指摘した。