東京地裁民事部の過密

東京地裁の事件番号2万を超える

 裁判所に訴訟を提起すると、一つ一つの訴訟に事件番号がふられる。例えば東京地裁平成21年(ワ)第20001号というと、平成21年に東京地裁に提訴された20001番目の通常訴訟ということになる。東京地裁では既に事件番号は2万を突破。今年中にも4万件を突破するとみられている。

過払金訴訟の激増

 過払金訴訟を起こすとしたら、どこの裁判所に提起すべきか。これは裁判所の管轄の問題である。過払金訴訟の場合、「債務の履行地」が債権者住所地のため過払金債権者の住所地か、被告の住所地として貸金業者の本店所在地が、管轄裁判所となる。
 そうすると東京は人口が多く、そのため過払金債権者の数が多く、東京を本店とする貸金業者の数も多い、このため過払金請求訴訟の多くが東京地裁に申し立てられる。
 7月に入ってから、過払金の減額を求めてくる業者が激増した。前までは任意和解で利息まで払ってくれていたところが、何割まけてくれと言うようになってきた。そうなると必然的に訴訟が激増するはずだ。今頃武富士も、CFJや最近のアイフルのように、支配人を養成しているのではないか。

裁判所の定員は法律で決まっている

 地裁、高裁の裁判官、事務職員等の定員は裁判法職員定員法が具体的に定めている。同法によれば、各職の定員は、高裁長官が8人、判事が1717人、判事補が1020人、簡裁判事が806人の合計3551人、職員数が2万2089人となっている。定員を増やすには、いちいち法律を改正しなければならないのである。(最終改正は平成21年3月31日法律第11号)
 具体的に、職員の定員を定めて同法第2条を引用してみよう。定員を一の位まで細かく決めているのが、異様だ。
「第二条 裁判官以外の裁判所の職員(執行官、非常勤職員、二箇月以内の期間を定めて雇用される者及び休職者を除く。)の員数は、二万二千八十九人とする。」

昭和39年に比べて、裁判官は2倍、職員は1.06倍

 ところで、裁判事件数は増えているのに、裁判官、書記官等の職員数の増員が進んでいない。昭和39年当時、裁判官の定員が1737人、職員の定員が2万808人。裁判官は2倍になったが、裁判所職員は1・06倍しか増員されていない。
 東京地裁の書記官に聞くと、東京地裁では民事部の書記官不足が深刻だという。東京に事件が集中しているが、定員が増えないため、地方の裁判所から人を呼び寄せるしかないが、思うに任せない。裁判員制度の導入が影響してか、民事部の書記官が刑事部にどんどん異動させられるため、ただでさえ少ない書記官がますます少なくなっている。
 今後、過払金訴訟は激増する。その負担をまっさきに負わされるのが東京地裁だ。こうした過払金事案で判決となると、書記官の負担が重い。書記官受難時代がやってきそうだ。東京地裁も第1回期日前に、争点整理を書面でさせる等、訴訟運営の合理化を進めて行く必要があるかもしれない。