米金融大手4社黒字決算の意味するもの

米金融大手4〜6月期黒字決算

 米金融大手の第2四半期決算はいずれも増益、黒字となっている。

※決算期の変更があったため08年3〜5月期比

  • JPモルガン 27億2100万ドルの黒字で前年同期比36%増
  • シティグループ 42億7900万ドルの黒字 前年同期は24億9500万ドルの赤字
  • バンカメ 32億2400万ドルの黒字、前年同期比5%の減益
リテールはマイナス、ホールセールはプラス

 銀行業務は大きく2部門に分かれる。一つは、ホール・セール・バンキング、すなわち大企業や機関投資家向けの大口金融取引で、もう一つはリテール・バンキング、中小企業や個人向けの小口金融取引だ。今回の決算では、リテールの赤字をホール・セールの黒字が上回ったという特徴がある。
 ゴールドマン・サックスはもともと投資銀行だったため、ホールセールス部門がほとんどのため、大幅増益となった。
 JPモルガンは、住宅ローン等の個人向け融資が97%減益、クレジット部門が6億7000万円の赤字だったが、対照的に証券部門の最終利益は14億7000万ドルの黒字で、前年同期比3.7倍だった。
 バンカメは、米国で預金額トップ。収入の8割以上を国内で稼ぎ出す。投資銀行業務はGS、JPモルガンにかなわないと見切りとつけ、リテール銀行業務と資産運用業務を強化してきた。しかし、個人向けローンなどで焦げ付きが拡大。バンカメは貸倒引当金は前年同期比約2・3倍の約134億ドルに達した。
 シティグループも個人向けローンなどで焦げ付きが拡大。貸倒引当金は前年同期比79%増の約127億ドルに達した。

シティ、バンカメの黒字には特殊事情

 シティ、バンカメはそれでも黒字になったのは、特殊事情がある。シティは傘下の証券会社スミス・バーニーの売却で約111億ドル、バンカメは中国建設銀行株の売却で約53億ドルの利益を計上したのだ。
 米国の失業率は今度悪化が見込まれ、個人消費は今後縮小して行くだろうし、不動産価格も底を打ったとは到底言い難く、リテール部門はさらなる悪化が予想される。今の株価上昇が白川日銀総裁がいう「偽りの夜明け(日本のバブル崩壊後も何度か景気回復の指標が現れ、その都度景気回復が期待されたが、結局は偽りの夜明けだった)」だとすれば、ホールセールスも今期のようには利益を上げられないだろう。