中国の公共投資も底なしではない

中国の公共投資ラッシュ

 国家発展改革委員会は09年5月21日、4兆元に上る投資計画の内訳を公表した。

  • 廉価住宅、簡易住宅区改造など社会保障的住宅事業…4,000億元 10%
  • 農村の水道、電気、道路、ガス、住宅等の民生事業及びインフラ事業…3,700億元 9.25%
  • 鉄道、道路、空港、水利等の重要インフラ建設と都市電力系統の改造事業…1兆5,000億元 37.5%
  • 医療・衛生、教育・文化等の社会事業…1,500億元 3.75%
  • 省エネ・排出削減並びに生態建設事業…2,100億元 5.25%
  • 自主革新並びに産業構造調整事業…3,700億元 9.25%
  • 四川地震復興再建事業…1兆元 25%

http://www.asiam.co.jp/news_box.php?topic=012403

公共事業

 中国の4兆元景気対策は、このように公共事業が中心だ。そのため中国の景気回復には持続力がないとの見方がある。他方、中国は国家財政はまだ健全だし、インフラも未整備な地方は多いから、景気が回復しなければ、もっともっと公共事業をすればいいという意見もあるだろう。しかし、そうだろうか。
 かつては、政府の命令は絶対だったため、地図に一本線を引くだけで道路はできた。文句を言う住民がいれば強制的に立ち退かせれば、事は済んだ。しかし最近は中国でも、住民が政府のやることに異議を言うようになった。中国ではこうした人権の主張を「維権」という。民主主義がないため、住民は自らの権利主張を、実力行動で示さざるを得ない。中国誌「瞭望」(2008年9月8日号)によると、国内で起きた集団抗議行動は1993年に8700件だったが、2005年は10倍の8万7千件に増え、06年は9万件を超えた(http://www.sanin-chuo.co.jp/column/modules/news/article.php?storyid=512673033)。こうした事件の8割は住民が自分の権利を守るための行動から起きたものだ。上海当局は、リニアモーターカーを、現在開通している浦東空港から上海の玄関長陽路駅までの40kmから、さらに虹橋空港杭州まで延伸する計画をもっていたが、市民は放射線、騒音対策が不十分として、数千人が目抜き通りで反対の意思を表示する「散歩」活動を続け、結局市当局は延伸計画を凍結せざるを得なくなった。
 これは他国の公共事業でも言えることだが、公共事業費用は土地取得費と建設費とに大きく分かれる。景気対策に効果ある真水部分は建設費だが、今後新しく公共事業を計画するとなると、土地取得費が発生するため、真水部分は減ってくるだろう。

個人消費の今後

 中国の今後の経済回復について、もう一つ気になることがある。個人消費だ。中国経済はこれまで外需依存だったが、中国政府も内需転換を目指している。しかし中国国家統計局によると、6月の消費者物価指数は前年同月に比べ、1.7%下落し、5か月連続のマイナスになっている。下落率も前月の1.4%より拡大となった。中国でも設備と雇用の過剰が相当なものになっているのだろう。デフレ懸念が次第に現実化しつつあり、今後のデフレスパイラルが心配される。
 実際北京の外資系スーパーの幹部によると、「4−6月期は前年実績割れ」、国内百貨店大手幹部も「安値競争で数量は出ているが、消費者の反応は鈍い」という(日経09.7.17)
 広東省は、同省の輸出が今年上半期、前年同期比18.6%減。最低賃金の引き上げを当分見送る方針を決めたという。広東省は中国国内の賃金相場のリード役で、他地域でも同様の動きが広がるのは確実だ(日経09.7.17)