定期預金7年ぶり高水準 日経「家計のリスク回避」とウソ分析

日経の分析

 7月20日付日経朝刊で、「個人マネーが生活防衛の動きを強めている。定期預金残高は5月末時点で前年比5%近く増え、約7年ぶりの高水準になった。」と日銀発表を引用。そして「雇用や賃金への先行き不安から、個人が元本割れのリスクのない預金などの安全資産を積み上げているためだ」と分析している。

定期預金残高の推移

 しかし実際の定期預金残高の流れをみると、01年201兆円あった定期預金残高が02年4月のペイオフ解禁(預金保険制度では普通預金が1000万円まで保障されるだけで、定期預金は保証されなくなった)以降激減。ペイオフ直後には一気に残高が185億円ほどになり、その後も毎年減り続け、06年6月にはついに170兆円にまで減ってしまった。しかしその後は逆に残高がどんどん増えて行く。そして今の残高になっているのである。グラフを見ても、リーマンショック以降突然増えたのではなく、同じ角度で増えている。日経の分析は実態に合っていない。

実際は小泉さんのせいでは

 定額預金残高の減少が底を打ち、一転上り調子になった06年は小泉さんが「骨太の方針」で、社会保障分野で07から11年度までの5年間に自然増分を1兆1千億円減らして、財政の赤字をストップしよう、そして目標のために、毎年2200億円減らそうとした年である。こうした動きが、老後に不安を持った勤労世代が、貯蓄に走らせたのではないか。
 06年11月、政府の景気基調判断は「回復」で、02年2月に始まった景気拡大が58か月連続となり、戦後最長のいざなぎ景気(1965〜70年)を超えたと政府は発表した。しかし、02年1〜3月期から、06年4〜6月期まで、名目GDPは21兆円増えたが、サラリーマンの所得は4兆円も減っている。結局、トヨタやキャノンといった外需産業を始めとする大企業が、内部留保したり、株主配当に回したのである。
 結局国民は「政府に頼っていたのでは、自分の生活を守れない」と観念して、へった所得から少しでもと貯蓄を増やしていったのが今日の定期預金残高なのではないだろうか。
 構造改革大好き路線で、今でも竹中さんが紙面を飾る日経ならではの分析だ。