コミットメントラインの高止まりの意味するもの

コミットメントラインとは

 コミットメントラインとは銀行が取引をしている企業にたいして定めた融資枠である。93年制定の特定融資枠契約に関する法律によって規制されている。銀行と取引先の企業があらかじめ融資の上限枠を協議しておき、この融資の枠内でなら一定期間いつでも審査を必要とせずに銀行が企業に資金を提供する義務を負っている。クレジットカード、サラ金とかでも、借入枠内でなら、自由に借り入れができるが、これと違うのが、コミットメントラインの場合は、利息額が実際に借りている額ではなく、限度額に利率を掛けたものになる点である。
 例えば、年利12%で、コミットメントラインが10億円であれば、いくら借りていようが借りていまいが、毎月1000万円の利息を払わなければならない。だから一円も借りていない時期でも、月1000万円の利息を払わなければならないのである。しかし、企業にとっては、審査の必要がないため迅速な資金調達が可能になるというメリットがある。企業としては、金庫代りに、いざとなればすぐにも借りれる先を持っておきたいと思うものだ。迅速かつ容易に調達できる資金があるために企業は流動資金を減らすことができ、貸借対照表のスリム化が実現される。ことにリーマンショック以降の企業では、借りるに借りられず、黒字倒産してしまった企業が結構あるため、その需要は大きい。借りていなくても払わなければならないのは癪だが、保険料と思えば、利息も支払う気になる。また、銀行はコミットメントラインを設定することによって、通常の金利に加えて企業から融資枠の金額に応じた契約料を徴収するため、安定した財源を確保することができる。
 ただ、利息制限法に反しないのだろうか。それも心配ない。同法の3条で利息制限法の適用外とされているからだ。但し、大企業等でないとこのコミットメントライン融資の対象にはなっていないことになっている。

この銀行融資枠の最高水準が続いている。

 09年5月末の銀行融資枠(コミットメントライン)の契約額は26兆1502億円で、過去最高だった3月末から横ばいで高止まりしている。日銀によると、前年同月比1.8%増だったのに対し、5月末は5.3%増と伸びが拡大した。やはり、あのリーマンショックのときの悪夢が消えないのだろう。

追記

 日銀によると09年7月末のコミットメントの利用額が4兆6900億円と前年同月比7.7%減となった。昨年12月末には過去最大の6兆400億円に達したが、09年4月以降は5兆円を下回る水準で推移していた。
 この「利用額」とは、前述した「契約額」とは異なる。契約額は枠のことであり、利用額は枠の中で実際融資を受けている額である。前の数字を見ると、銀行は実際は5兆円弱しか融資していなくても、26兆円分の利息をとっていることになる。