ロシア、中国自動車産業GMブランド購入で競争力が飛躍的に向上

GM解体

 GMは6月1日までに、再建策をまとめることを政府に約束している。本来は4月1日までに終えてなければならない宿題だが、2ヵ月延長してもらった。もうこれ以上の延長は認められない。
 再建策では、再三の取れないサターン、オペル、サーブの3ブランドを売却する予定だ。破産の場合も、同様切り売りされるだろう。

サーブの売却先

 サーブの売却先で一番有力なのが中国の吉利汽車(中国語では自動車のことを「汽車」という)だ。サーブはスウェーデンで飛行機を製造していたが、自動車製造に参入した会社だ。今でこそあまり耳にしないメーカーだが、バブル時代の日本では目新しさもあって結構人気も高かった。
 中国は自動車メーカーが130社もあり、中国政府は合併を通じて、大企業への集約化を進めている。11年までに年間販売200万台以上のメーカーを3社前後、100万台以上のメーカーを5社前後誕生させる計画だ。集約化が進めば、買収資金も潤沢となる。中国の自動車産業は、今までは小型自動車を安価に販売することで、市場の支持を得てきたが、サーブの買収が実現すれば、高級自動車のブランドを獲得できるし、それ以上に先進的技術を獲得できるのが大きい。
 中国は09年4月も新車販売台数は前年同月比25%増の115万3000台と、4か月連続で米国を上回り首位を独走している。09年には1000万台の販売が確実だ。中国の自動車産業はこうした国内需要を追い風にしている。ここに技術力、ブランド力が加われば、日本の自動車産業にとって大きな脅威となる。
http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20090409/1239292334
 なお中国政府は09年1月に打ち出した自動車産業の振興策で、技術革新のために今後3年間で100億元の財政資金を投入するという。

オペルの売却先はロシア企業が有力

 オペルの売却先としては、ロシアの大手自動車メーカのGAZが有力だ。GAZはロシア語のゴーリキ自動車工場の頭文字をとって命名されている。ゴー力自動車工場は旧ソ連時代の有力自動車工場の一つだった。旧ソ連時代の指導者が乗っていたボルガは、同工場が作っていて、現在も同社の主力ブランドになっている。相変わらずあか抜けないデザインだが、安価な車を作っている。http://www.gaz-company.com/gaz31105.aspx
 GAZのオーナーはロシア最大の財閥を率いるデリパスカ氏。しかし同氏はこの1年で9割も資産を減らした。政府高官によると、同氏が所有する大手自動車GAZを国有化する検討に入ったという(日経09.5.4)。ロシアはガスプロムを始め、政府が有力企業をどんどん国有化し、かつての社会主義国に逆戻りしている。プーチンとしては、GAZを国有化するとともに、オペルのブランドを購入、GAZを中心にして自動車産業をとりまとめ、国際企業に育てようとしているのではないか。
 プーチン国産車育成に並々ならない意欲を持っており、自動車の輸入関税を大幅に引き上げた。例えば2005年式の2000ccの乗用車で、これまで10万円だった関税が、一気に60万円になってしまう。このため輸入車の価格競争力が大きくダウン、中古車にいたっては輸入禁止に近いダメージを受けている。ウラジオストック等では、輸入中古自動車販売が地場産業になっており、市民の反対デモもあったが、政府によって完全に押さえ込まれている。