平成21年4月14日最高裁第3小法廷判決 遅延損害金の発生に関する新判例

判決の概要

 最高裁が、4月14日、借り手側に不利な判決を出しました。
 利息制限法では、貸金額が10万円までは年20%、100万円までは年18%、それ以上は年15%以上の利息をとってはいけないとしています。しかし期限に遅れて遅延損害金を払う場合、その利率は上記利率の1.46倍が上限利率になるのです。
 期限に1日でも遅れた場合、借主は期限の利益を喪失します(一括請求をされてもいいことになり)が、業者はそういった場合、実際には一括請求することなく、従来通り分割返済を認めるのが普通です。そのため判例も、借主は一度は期限に遅れ期限の利益を喪失したが、その後貸主が一括請求を行わなかった場合は、期限を再度付与したものとして15−20%の利率で計算して良いとする下級審判例を多く出ていました。
 実際この最高裁判決の原審の東京高裁判決も、同じように考えて、一度は期限の利益を喪失したが、再度期限の利益を付与したものとして、年15%で計算し、過払い金の発生を認めたのです。
 しかし最高裁は、期限の利益の再度付与を否定。となると逆に過払い金どころか貸金残金ありとの結論になりかねないのです。

判決の事案

 貸付については、貸付限度額内での自由な借入を認めるもの(仮に「借入自由型」とします)と、貸付をいったんした後は返済のみさせるもの(仮に「返済のみ型」とします)との二つのタイプがあります。
本件は「返済のみ型」の借入に関する判例
①業者は、平成11年6月11日付で480万円を、毎月元金8万円+利息を合計60回の分割で支払う約束で、貸し付けた。
②借主は平成13年1月5日の期限を徒過した。
③しかし、その後借主は3年以上にわたり、回数にして100回、合計368万4466円を弁済した。

原審の東京高裁平成19年3月8日付判決

 ②、③の事情を総合的に考慮すると、業者は借主に対して②による期限利益喪失を宥恕し、再度期限の利益を与えたものと解するのが相当である、として業者に過払い金の支払を命じた。

最高裁判決

 業者は、期限利益喪失後、弁済受領のたびに、受領した金員を「利息」ではなく「損害金」へ充当した旨記載した領収証兼利用明細書を交付していたし、これら各書面には受領した金員を期限利益喪失日の翌日以降に発生した損害金または残元金に充当した旨の記載がされていること等から、業者が上記各書面の記載内容とは異なる内容の請求をしていたなどの特段の事情ない限り、再度期限の利益を付与したとは認められない。

判決の影響力

 「借入自由型」に対する影響力は、途中延滞した数日間を26.28%で計算する程度だと思いますが、「返済のみ型」の場合は影響大でしょう。
 もっとも上記事例では、毎月その後8万円+利息を払っていた訳ではないようです。3年間で100回というと月2、3回払っていることになるし、かなり不規則な支払い方をしていたように思います。
 ですから一度遅れただけで、その後は遅れることはほとんどなかったという場合には、信義則で一括返還請求を排除でき、遅延損害金支払も免れることができるかもしれません。