小泉改革をまだ信奉する日経

小泉構造改革信奉者が書いた社説

 09年4月9日日経朝刊の社説に次のような論説があった。この論説を見て、竹中さんが永田町を離れ、大手町をうろうろしている理由が良く分かった。
 小泉政権による規制改革の強化がワーキングプアを生む温床になったなどという、根拠の薄い批判が経済危機の深刻化とともに勢いを増している。
 改革逆行の典型は、労働者派遣の規制強化だ。厚生労働省は日雇いなど期間が30日以内の派遣を原則禁止にするための法案を国会に提出した。失業の憂き目に遭った人にとっては1日単位から仕事を見つけられるのはありがたいものだ。
 タクシー台数の需給調整の復活も雇用にはマイナスだ。

ワーキングプアが増えた理由は

 要は労働分配率の問題だろう。小泉改革後、中小企業では減らなかった労働分配率が、大企業では減っている。そうしてできたのが巨額の内部留保金と配当金である。外人株主が多い現在、その配当金の多くが外国に流れて行ったのである。
 09年3月11日発表の厚労省調査によると、過去5年間に結婚した20-30代男性の割合は、正規社員が24.0%なのに比べて、非正規社員は12.1%。無職の9.0%とあまり変わらない。また過去5年間に子供が生まれた20-30代夫婦は、妻が正規社員の場合43%だが、妻が非正規社員の場合22.4%だった。多くの非正規社員が、低収入ゆえに結婚もできず、子供も産めない。こういった現実を日経はどう考えているのだろうか。

日雇い派遣がありがたいか

 真面目に働くことを考えている人間で、低賃金かつ不安定な日雇い雇用をありがたがる馬鹿がどこにいるか。日雇いが悲惨なのは、一度日雇い労働についてしまうと、日雇いから抜けられなくなってしまう。日雇労働者が月給払いの職場に就こうとすると、まともな給与が出るのが2か月後のため、少なくとも生活費1か月半分は用意していなければならない。日雇いをしていると、そんな貯金はできない。そして日雇いを続けるということは、履歴書に書く職歴がないということだ。日雇を続ければ続けるほど就職は難しくなるのだ。

タクシーの現実を知っているのか

 タクシー会社の経費の4分の1は車代、4分の3は人件費だ。しかもその人件費は歩合給である。タクシーが増えて、一台あたりの売上が減っても、人件費も減るため会社の懐はそれほど痛まない。一台あたりの売上が減っても会社全体の売上が伸びれば元はとれる、と考えて、経営者は増車するのである。結局しわ寄せは運転手に来る。結果生活保護以下の給料で暮らしている運転手が続出することになる。
 構造改革主義者は、自由競争=サービスの向上と単純に考える。しかしそのような公式はタクシーに当てはまらないということを知らない。客がタクシーに乗るのは、流しか、駅の構内かのどちらかがほとんどだ。では100台のうち10台が値段を下げたとする。ではあなたは10台に1台の安いタクシーを拾うために、10台のうち9台の高いタクシーをやり過ごすだろうか。タクシーを利用するのは、時間を金で買うためだ。待ち時間がかかればタクシーに乗る意味がない。もっとも大阪人や京都人は10台のうち1台は待つかもしれない。だから三菱タクシー、MKタクシーが流行るのである。構内タクシーも同じだ。並んで乗る以上来たタクシーに乗らざるを得ない。
 要は値段を安くすれば、客が増えるという構造にタクシーはなっていないのである。