下請け代金の支払いサイトの長期化

不況による影響

 最近の銀行の貸し渋りで、資金手当てが付かず、倒産する企業が増えてくる。しかし弱肉強食のこの世界、資金リスクは中小企業に押し付けられる。元請けが商品の納品を受けてくれない、受けてくれても代金の支払い時期が延ばされるようになる、といった悩みを持つ中小企業が多いのである。

下請代金支払遅延等防止法

 この法律の第2条の2は次のように定めている(文言はわかりやすいように書き換えた)

  • 下請代金の支払期日は、元請けが下請けが納品したものの検品をするかどうかを問わず、元請けが下請けから納品された日から起算して、60日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。
  • 下請代金の支払期日が定められなかつたときは、納品日を支払期日とみなす。※「だから契約をしないほうが得」と考えている事業者さん気を付けてくださいね。
  • 支払期日が納品後60日を超えて定められている場合は、納品日から起算して59日目が下請代金を支払期日とみなす。

 しかし、実際の現場では60日以内に現金ではなく、手形を渡されるケースが多い。同法はそのような場合を前提に4条2項2号で次のように規定している

  • 下請代金の支払につき、当該下請代金の支払期日までに銀行等による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること。

 そして公正取引委員会及び中小企業庁の運用では、繊維業90日、その他の業種は120日を超える手形を割引困難な手形としている。
 そのため下請けは、納品後60日+120日=180日も下請け代金を支払われないことが多いのである。

公取による警告

 120日を超えるサイトの手形を渡していた場合、公取委に通報すれば、公取委が警告を出すことになっているが。中小企業庁の調査では下請け企業の1割が120日以上のサイトの手形を渡されているという。では、2条2項のように「手形の期日を120日目とみなす」などという規制は、手形の形式的性格からして不可能である。

中小企業庁が手形サイト短縮化を検討

 09年3月18日「下請取引適正化推進会議」が「下請け代金は現金で支払うことが原則」と手形による支払の見直しを求めた。しかし中小企業庁はこの線より後退した内容での検討を行っている。すなわち、手形の振出日から支払期日までの期間の短縮をしようというのだ。
 だが下請け中小企業はさらに孫請け企業に対する支払で、120日の恩恵を蒙っており、この改正は中小企業がかえって窮地に追い込まれる危険性もなくはない。