晴れの日に傘を貸すと言って、雨の日に傘を貸さないのが銀行だ

中小企業向け融資高が示す銀行の貸し渋り

 中小企業向け融資全体は、前年同月比では16〜17ヶ月連続でマイナス。「晴れの日に傘を貸すと言って、雨の日に傘を貸さないのが銀行だ」というが、まさにその通りだ。銀行はバブル崩壊後、低金利という国民の犠牲の上で儲けを出してきた。これだけ国民にお世話になっておきながら、そろそろ国民へのご奉公を尽くしたらどうか。
 3月24日全銀協の杉山会長(みずほ銀行頭取)は記者会見で、中小企業向け融資の足許の状況を聞かれ、「昨年10月以降高い伸びを示している。」「みずほ銀行の2月末の中小企業向け貸出は、12月末対比でも増加している」と強弁したが、記者から前年同月比では連続マイナスではないかと突っ込まれ「前年同月比の数字はいま持ち合わせていない。ただし、私どもとしては、各銀行が政府によって総額20兆円に拡大いただいた緊急保証制度も活用して中小企業向け貸出に積極的に取り組んでいる。」と答えた。このご時世で、貸し渋り対策について聞かれるとわかっていながら、前年同月比の資料を持ってこないところが悪質だし、前月比で増加しているのは08年10月末から実施されている緊急保証制度のおかげだ。緊急保証は保証協会が100%保証してくれるので、銀行のリスクはゼロ。しかも金融庁から、保証協会付融資は安全度で国債並みとされ、自己資本比率にも影響をしない。他人の褌で相撲を取って勝ったからといって自慢する話じゃないだろう。

大手銀行の集中検査始まる

 4月から大手銀行を主な対象にした異例の集中検査が実施されている。この方針が与謝野さんから発表されたのが3月10日だ。
 金融庁による集中検査は貸し渋りに的を絞った立ち入り検査で、6月まで実施。大手行のほか、「苦情が著しく多い」地域金融機関地域金融機関が対象になる。企業向けだけでなく、住宅ローンなど個人向け融資も検査する。融資の方針などを確認し、個別企業や業種への融資打ち切りがないか点検し、悪質な事例があれば、業務改善命令など行政処分も検討するという。

金融円滑化ホットラインの活用法

 金融庁は、08年4月30日から「金融円滑化ホットライン」を開設している。平日の午前10時から16時まで、電話番号0570-067755(平成21年4月1日からナビダイヤルで受付、IP電話PHSからは03-5251-7755)で受け付けている。ただ、ここに相談しても、直接金融庁貸し渋り貸し剥がしを取り締まってくれる訳ではなく、こういう融資相談窓口があるよ程度のアドバイスしかしてくれない。ただここで集められた情報が、金融庁の今後の銀行検査、監督に利用されることになるから、貸し渋り貸し剥がしをした銀行を懲らしめてほしい、という人にはお勧めだ。
 銀行にいじめられたら、じゃあ金融円滑化ホットラインに相談するぞと言ってみてはどうだろうか。ひょっとしたら銀行がビビッて態度を変えるかもしれない。

BIS基準と貸し渋り

 過日、佐藤金融庁長官の発言に関連して、BIS基準を墨守するのはどうかと書いたが、BIS基準を厳格に適用することが、かえって貸し渋り対策にプラスかもしれない。
 公的資金による資本注入は昨年末に施行された改正金融機能強化法で可能になった。ただ現時点では、札幌北洋ホールディングスなど3行が受け入れを表明しただけだ。北洋は頭取が第二地銀協会の会長をつとめている関係で手を挙げたのだろうが、貸し渋りをなくすには銀行への公的資金注入が不可欠となる。どの銀行も考えることは同じ。「国の支配を受けたくない」ということだが、これは「自分たちだけで勝手にやりたい」=「このまま貸し渋り貸し剥がしをさせてほしい」の同義語でもある。
 与謝野さんもことあるごとに、改正金融機能強化法に基づく公的資金の注入制度の積極活用を金融機関の首脳らに求め、いつでも注入が受けられるよう優先株発行のため予め定款変更を検討するよう要請している。

米国の公的資金注入案

 3月の新聞で、米国の公的支援注入のための法案の内容が報道されていたが、その法案では公的資金を受けた金融機関には、貸し出しがどの程度増えたか3カ月ごとの報告を義務づけ、財務省の担当者が取締役会にオブザーバーとして参加できる権限も持たせ、融資拡大などに向けて圧力を強める内容となっていた。