貸金業法完全実施、当初予定の09年12月からさらにずれ込む

貸金業法完全実施 09年12月には間に合わず

 06年12月に公布された貸金業法は、改正点が多岐に及んでいるため、4段階にわたって逐次施行されることになっている。07年1月に罰則強化部分が、07年12月には取立規制強化部分が施行された。09年6月には貸金業者登録、信用情報機関の規制強化が施行される。そしてさらには09年12月には完全実施となり、グレーゾーン金利撤廃、上限金利引上げが施行されることになっていた。「なっていた」と過去形で言うのは、完全実施が09年12月からずれこみ、最悪10年6月にずれ込みかねないからだ。さらにその先にずれ込む可能性も否定できない。貸金業法制定時40.04%の完全実施がずるずる引き伸ばされた過去があるからだ。
 確かに法律の上では10年6月までに実施されればいいことになっている。しかし金融庁与野党との取り決めで公布日から「おおむね三年後」に完全実施されることにしていた。となれば09年12月に完全実施されるべきなのだ。

実施遅延の理由

 4月7日付日経新聞は、ここに来て実施が遅れている理由を「政府与党内で、中小企業への資金供給の円滑化を求める意見が台頭してきたため」と説明している。
 しかし私は、佐藤隆文金融庁長官自身が消極的姿勢に転じたのではないかと考えている。この佐藤長官は09年2月23日、SFCGが民事再生手続き開始を申請したことを受けて、定例会考え方の持ち主が実施遅延に傾くのは不思議ではないと思う。
 彼は同会見で、「国内の中小企業金融への影響を注意深く見ていきたい」との姿勢を表明。SFCGをはじめ、貸金業者の経営については、利息収入の減少や過払い返還請求で「厳しい状況」と指摘した。さらに「事業者金融は、日本の経済活動全体で果たしている金融仲介機能に一定の重要性がある」として、今後は、貸金業者だけでなく、借り手の中小零細企業の状況も注視していく姿勢を示した。(ロイター2月23日配信ニュースから)
 私は23日のブログでそれは違うだろうと主張した。なぜなら「担保をとり、その担保の範囲内で貸付枠を設定し、貸付枠内であればじゃぶじゃぶ金を貸して、会社が倒産すれば、保証人から苛酷な取り立てを行う。」というのが商工ローン。このシステム自体にダメ出しすべきなのだ。普通、銀行とかが金を貸すときは、貸付先の会社の経営状況、財務状況を見て融資するか否かを判断する。しかし商工ローン事業者金融はそんなところは見ない。見るのは回収可能性だけだ。だからこうした商工ローンは、経営診断のプロではなく、回収のプロによって立ち上げられるのが普通だ。こうした問題点は、あの木村剛の「金融維新」にも書かれている(という木村は結局サラ金転向者を採用し、商工ローンをやっているのだが、、、)。
 そもそもグレーゾーン金利を残すことがなんで景気対策なのか。金利を安くしたほうが、健全な企業は生き残る。グレーゾーン金利がなくなることで息絶える企業はもともと継続見込みのなかった企業が多いはずだ。

先行企業がバカを見る。

 サラ金信販業者の多くが、完全実施を控え、年18%に金利を落としている。まだグレーゾーン金利にしがみついている企業は少数派だ。もし完全実施が延期になれば、先行して金利を安くした業者がバカを見る。
 金融庁の職員の熱意に佐藤長官が水をさしているとしたら、即座にクビにすべきだ。