過払い金減額を主張する業者がいう「今うちの会社は苦しい」は本当か

業者の弁解

 過払い金の支払いを値切ってくる業者とは、次のようなやり取りになることが多い。

  • 業者:うちは経営が苦しくて、このくらいしか払えないんです。回収した金額から、過払い金を払っている状態で。
  • 当方:キャッシュフローはそうかもしれないけど、内部留保とかもあるんじゃないんですか。貸借対照表を見せてもらわないと、はいそうですか、とは言えないですよ。
  • 業者:私ら一介の社員で、貸借対照表なんか、見れる立場ではないですから。
  • 当方:それじゃ、こっちも判断できないじゃないですか。
  • 業者:うちもリストラで、給料も下がっていますし、上のほうも資金繰りで苦しんでますから、会社自体厳しいことは従業員自身がよくわかっていますから。
  • 当方:それじゃあ説明になっていないでしょ。
  • 業者:だからこちらもお願いしているんです。
業者のいう「だからこうしてお願いしているんです」の意味

 貸金業者は、今でこそ「キャッシュフローがマイナス=入ってくる金より出ていく金が多い」状態かもしれないが、以前にもうけた分の内部留保を抱えていることが多い。赤字でもないのに赤字だと言って、こちらに債権放棄させることは詐欺利得罪にあたる。だから彼らもいい加減なことは言えない。言えないから「だからお願いしているんです」と曖昧なことしかわざるを得なくなる。
 上場企業なんかだとホームぺージにIR情報と言って、貸借対照表が載っている。貸借対照表は別名バランスシート(B/S)ともいう。要は資産はどのくらいあって、負債がどのくらいかあるかが、表になっているものだ。これを見ると結構金あるじゃないということがある。
 あと最近インターが株式非公開化を目指し、TOB(公開買付)で自己株式を買い集めた。買付価格は1株につき175円。買付価格は、(資産−負債)÷発行済み株式総数を基準に算出するのが普通だから、なんだ1株当たり175円も黒字だったんじゃない、ということになる。
 さて、それ以外のB/Sをまったく公表していない貸金業者についてはどう判断するのか、一つは帝国データバンクとか東商リサーチとかいった企業情報を持っている会社から金でデータを買うというのが一つ。もう一つは、貸金業の更新時期を調べ、それ以前の事業年度は黒字になっていることがわかる。現行の貸金業法施行規則5条の3により、「資産の合計額から負債の合計額を控除した額」が法人の場合500万円、個人の場合300万円なければならず、同規則4条3項8号によれば貸金業登録ないし登録更新の際に、直近の貸借対照表を提出しなければならないのである。だから貸金業登録していれば、少なくとも登録時ないし更新時に法人なら500万円、個人なら300万円黒字だったはずなのである。
 もし今赤字になっているということであれば、貸金業法24条6の4第1号、同法6条1項14号により、監督官庁貸金業登録を取り消すか、業務中止を命ずることができることになる。

インターの過払

 インターは、最近過払金を請求しても、3割回答だ。訴訟を起こしたが、訴訟になっても3割。裁判官も「ほかでもそうですよ」とのこと。インターは「判決取るなら取ってくれ」と開き直っている。
 こうした会社は、預金を差し押さえても、残高がわずかしかない。頻繁に隠し口座に送金しているためだ。おまけに差押えが競合しているために供託されてしまうので、金もなかなか戻ってこない。