日本政策金融公庫を知っていますか

日本政策金融公庫とは

 日本政策金融公庫とは、政府が株式の100%を保有する株式会社。08年10月1日、国民生活金融公庫農林漁業金融公庫中小企業金融公庫国際協力銀行(JBIC)という政府系金融4機関が合体する形で設立された。
 融資残高は巨大だ。旧国民生活金融公庫の7兆8605億円、農林漁業金融公庫2兆8232億円、中小企業金融公庫の5兆8143億円、国際協力銀行の7兆3136億円の総額23兆8116億円。りそな銀行の融資残高16兆8740億円を上回る。

与謝野さんが政府系金融民営化を批判

 この政府系金融4機関の民営化は、麻生政権下で実現したが、元々は小泉さんが決めたものだ。与謝野さんは3月10日の参院予算委員会で、「当時は世界が同時不況になることを全く想定せず、商工中金とか日本政策投資銀行とかの民営化が進んだ。不況が来ないことが前提の制度論で、間違いだったと思っている」と述べた。
 実は不況下で活躍が期待される日本政策金融公庫の貸付が、中小企業向け分が前年同月比で7.0%、国民生活向け分が同4.4%、それぞれ減っているからだ。日経09.3.22朝刊「けいざい解読」はこの減った原因が4機関の統合にあると見ている。これが与謝野さんのさきの発言につながったのだろう。

国際協力銀行がこれに加わった理由

 日本政策金融公庫の中に旧国際協力銀行も入っている。ほかの3機関に比べて、異質であり、違和感を感じる。なぜ国際協力銀行も加わったのか。それは財政上の理由が大きい。
 旧4機関の中で一番規模が大きい国民生活金融公庫は1515億円の負債超過となっている。農林漁業金融公庫は2936億円の資産超過、中小企業金融公庫は1969億円の資産超過だが、いずれも資本金は割っている。唯一資本金を確保しているのは国際協力銀行。9兆7902億円の資産超過だ。
 要するに国金、農金、中金の3事業体だけでは赤字になってしまうので、黒字の国際協力銀行をくっつけたのである。

国の金で作られ、国からの借金で回っている

 負債は財政融資資金と公債だ。財政融資資金は国債の発行を通じて金融市場から調達した資金等を源資に、政府が貸し付けたものである。公債は国民の金であるが、それを除けば、国の金を使って設立され、国からの借金で回っている会社なのである。

危機対応業務

 日本政策金融公庫法11条は、次のように危機対応業務を定めている。
 公庫は、その目的を達成するため、主務大臣が、一般の金融機関が通常の条件により特定資金の貸付け等を行うことが困難であり、かつ、主務大臣が指定する者(以下「指定金融機関」という。)が危機対応業務を行うことが必要である旨を認定する場合に、次に掲げる業務を行うものとする。
一 指定金融機関に対し、特定資金の貸付け等に必要な資金の貸付けを行うこと。
二 指定金融機関が行う特定資金の貸付け等に係る債務の全部又は一部の弁済がなされないこととなった場合において、その債権者である指定金融機関に対してその弁済がなされないこととなった額の一部の補てんを行うこと。

危機対応業務枠を1兆円から10兆円に拡大

 自民党国際金融危機PTは、この危機対応業務枠を従来の1兆円から10兆円に拡大する。融資枠1兆円が08年12月に設定されたが、日産自動車三菱自動車などの企業の申請が相次ぎ、たった4か月で使い切ってしまったからだ。融資先の企業が破たんすれば国の負担となる。政治的配慮から融資先の選択を誤ると財政のさらなる悪化をまねきかねない。

貿易金融支援で黒字の国際協力銀行の財政悪化も?

 09年2月14日、イタリアG20蔵相会議で、あの朦朧会見をした中川蔵相(当時)が、国際協力銀行JBICが、アジアを中心とした途上国の金融機関に対し総額10億ドル規模の貿易金融の支援を検討するとしていたが、今回のロンドンG20サミットで、麻生首相が4月2日、さらにパワーアップした220億ドルの支援を表明。その実施機関がJIBCになる。外交配慮で(常任理事国入りの思惑とかで)融資先を誤ると、虎の子のJIBCの財政も悪化しかねない。